密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

トリュフの歴史 (「食」の図書館)

著:ザッカリー ノワク、訳:富原 まさ江

 

 「食」の図書館シリーズの一冊とはいえ、トリュフだけで本が一冊できてしまうというのは、西洋においてトリュフがどれだけ重要なものかを示しているように思われる。実際、ここに書かれている歴史を読むと、こんなにいろいろあるのか、と驚かされる。

 紀元前1780~1760年に現在のシリアの地に在位したアムル人最後の王ジムリ・リムに関する粘土板によると、この王はトリュフにうるさかったらしい。古代ギリシャでも古代ローマでもトリュフは登場する。4世紀後半から5世紀初頭に書かれた「料理大全」にはトリュフのレシピが6種類含まれている。ルネサンスにも、フランスの美食文化の歴史にも関係する。北米でもトリュフはとれる。長い歴史を誇る中国ではトリュフが注目を浴びたのは最近で、これがヨーロッパの高級品の水増し用に使われて摘発されたケースもあるという。

 媚薬の効果がある、雷によって大量発生する、ということはかなり昔から言われていたようだ。健康との関係が言われたことも昔はある。トリュフと木の共生関係についての科学的な解説の紹介もある。トリュフ探しには、かつてはブタが使われたが、近年は犬である。電子嗅覚システム「Eノーズ」もそのうち使われる可能性が示唆されている。

 本文には日本のことは出てこないが、訳者あとがきには軽く触れてある。1976年に鳥取で採取されたのが最古の記録だという。つまり、つい最近のことだが、この国には20種のトリュフが自生していて、うち2種は新種だという。

 

目次

序章 台所の宝石
第1章 砂漠のトリュフ
第2章 苦難と栄光
第3章 トリュフ外交
第4章 トリュフに貢献したフランス人たち
第5章 世界各地のトリュフ
第6章 トリュフの将来 

 

単行本、179ページ、原書房、2017/10/20

 

トリュフの歴史 (「食」の図書館)

トリュフの歴史 (「食」の図書館)