密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

ロープウェイ探訪 昭和の希望を運んだ夢の乗り物!

著:松本晋一

 

 鉄道や自動車の本はたくさんあるが、ロープウェイの本はあまり多くない。しかも、オールカラーで写真が豊富。さらに、昭和レトロ感への著者のこだわりがそこかしこに感じられ、マニアック度が高い。

 最初に丸々6ページが割かれているのは、有名な函館山とか神戸六甲山とかではなく、観光地としてはちょっと地味な埼玉県の宝登山のロープウェイ。ここは昭和36年以降搬器が一度も替わっていない、というのがその理由。次いで4ページと大きく取り上げられているのは、現在残る中では日本最古の吉野ロープウェイ奈良県)。戦時中に住民の足という理由で廃止を免れた過去を持つ。鋸山ロープウェイ(千葉県)、御在所ロープウェイ三重県)、須磨浦ロープウェイ兵庫県)、身延山ロープウェイ山梨県)、千光寺ロープウェイ(広島県)までがそれぞれ4ページずつとなっている。

 それ以外は2ページもしくは1ページ、一部1ページ2つの扱いで、掲載数は合計国内145路線。ひとつひとつ、運行状況(冬季運休とか)、料金、アクセス、方式、全長、高低差、最大勾配、運転速度、所要時間、支柱の数、搬器の製造元と年数と定員、事業者、設計者、運行開始時期といったデータが、まめに載っている。

 個性的な路線も結構ある。今や日本でここだけになった山頂の「秘宝館」と書かれた建物に通じるスケルトンのアタミロープウェイ(静岡県)。松山城山ロープウェイ(愛媛県)はリフトと並行して走行する。紅葉の山肌の上に浮く大雪山層雲峡黒岳ロープウェイ(北海道)はまさに絶景である。かんざんじロープウェイ(静岡県)は日本現存唯一、湖上を渡るロープウェイ。新穂高ロープウェイ岐阜県)は、国内初&唯一の2階建て。立山ロープウェイ富山県)は、北アルプスの自然景観を守るため途中の支柱を一本も設けていないワンパル方式で1710mのワイヤー長と54㎜の直径は共に国内最大級。金剛山ロープウェイ(大阪府)は、国内唯一の村営ロープウェイ。姫路セントラルパークロープウェイ(兵庫県)は、サファリパークの上を通る。国内唯一の交走式フニテル方式だという箸蔵山ロープウェイ(徳島県)。昭和37年に開業したときには101人乗りというのは世界初だったという別府ロープウェイ(大分)。阿蘇山ロープウェイ熊本県)は火口をまじかに望めるが、運行するのは噴火警戒レベル1(平常時)のみとなっている。360度ガラス張りで1000ドルの夜景を満喫できる長崎ロープウェイ長崎県)の車両は、公募で「星のしずく」「月のしずく」と名づけられているという。

 ロープウェイ資料室という章に掲載されている資料も必見。昔の絵葉書、既に廃止されたロープウェイの写真、チケット、パンフレット、記念乗車券の数々。寝姿山のパンフはちょっとアダルト向きか。ロープウェイの国内外のおもちゃや、メダルやピンバッジなどの写真もある。全国ロープウェイMAPや、主要ロープウェイの開業一覧もある。なかなかよかった。

 

単行本、160ページ、グラフィック社、2016/7/7

 

ロープウェイ探訪 昭和の希望を運んだ夢の乗り物!

ロープウェイ探訪 昭和の希望を運んだ夢の乗り物!