著:宮下 規久朗
「カラヴァッジョはルネサンスの明暗法と短縮法の効果を最大限にまで推し進め、人体とそれを取り巻く空間を、豊かで丸みを帯びたものにしている見事な技法で描かれる、迫真的な存在感や行為の現実性は、イリュージョンの力を完璧に思い知らせてくれる」(フランク・ステラ、本書より)。
放蕩と悪行、殺人、逃避行。短く劇的な人生の中で数々の名作を生んだ画家、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(1571-1610)についての本。オールカラーで印刷も良好。薄い本だが、喪失してしまったものを含む多くの作品が紹介されている。
ミラノのカラヴァッジョ侯爵に使える執事の長男として生まれる。父はペストで早くに亡くなり、カラヴァッジョは13歳でシモーネ・ベテルツァーノの弟子となって家を出る。後の宗教画に生かされる少年像をはじめとする風俗画。緻密な静物画の描写。明暗を駆使した描写力。立体感。断首などの重いテーマ。
大評判となった「聖マタイ伝」(1600年)。試行錯誤を重ねた「聖マタイの殉教」(1600年)。処刑の現実を描いた「聖ペテロの磔刑」(1601年)。人物が扇状に展開するように構成された「キリストの埋葬」(1602-1604年頃)。ナポリの喧騒を一部反映したと解説されている「慈悲の7つの行い」(1606-07年)。生涯最大の作品といわれる「洗礼者ヨハネの斬首」(1608年)。マルタの騎士の復讐の追手から逃れる合間に描かれた対策「聖ルチアの埋葬」(1608年)。享年38歳で恩赦を受ける寸前に熱病で死ぬまでに残した作品の数々の生々しいまでの迫力は凄い。
カラヴァッジョの様式は後の時代のレンブラントやベラスケスにつながってゆく。ルネサンス様式の最後の時代にバロック美術への変革を生んだ天才画家。かなり粗野な面を持っていた天才の波乱に満ちた生涯は、何度か映画や小説にもなっており、ヨーロッパではかなり人気があるらしい。日本では2001年に本格的な展覧会が開かれてから一気に知名度が高まったという。この画家の生涯と作品に触れるには好適な内容に仕上がっている。
ムック本、95ページ、東京美術 、2009/12/1
もっと知りたいカラヴァッジョ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
- 作者: 宮下規久朗
- 出版社/メーカー: 東京美術
- 発売日: 2009/12/01
- メディア: 単行本
もっと知りたいカラヴァッジョ 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション) [ 宮下規久朗 ]
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