密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

食べても太らない! 「糖質ゼロ」の健康法

著:釜池 豊秋

 

 炭水化物や糖をなるべく避けるように指導している健康法の本は既にいくつか出ている。しかし、この本はそのようなものではなく、ビタミンやミネラルや食物繊維の豊富なニンジン・玉ねぎ・かぼちゃもNG、植物性たんぱく質の宝庫である豆すらNGという糖質の摂取をゼロにすることを主張している。

 食事に関してはいろいろな主張があるので、各自が良いと思う方法を選べばよいと思う。「糖質ゼロ」はなかなか過激だが、糖質制限自体は今や世間でもだいぶ広がってきた認識といえる。もっとも、食いだめしてもいい、カルシウムを多く含む牛乳はNG、炭水化物だけでなく、ニンジン・玉ねぎ・かぼちゃもダメ、豆類もダメというようなところまでいくと、どこまで他人に勧めるべきものかは疑問がある。

 著者はそうすべき理由として、ライオンがそうしているし人間も祖先をたどれば同じ肉食動物なのだからと強調している。しかし、実際は、人間は肉食動物ではない。そもそも人間は肉食動物を含む大半の動物とは異なって生命の維持に不可欠なビタミンCを体内で生成できないから、どうしても外部から補う必要がある構造になっている。身体的生物的特徴も、牙や鋭い爪のあるライオンなどの肉食動物とは違う。さらに加えるなら、
ライオンは人間が見習うべき長寿の生き物ではなく、寿命は20年程度である。人間は生後3か月から肉を食べて生きているわけでもない。二足歩行でたてがみも無いし、骨格も異なる。要するに人間は雑食性の生き物であって肉食動物ではないのである。ちなみに、なぜか、アルコールは種類を選んで摂ってもいいと書いてある。ライオンはワインなんて飲まないのだが。このように、この著者の説明は科学的なレベルものもとはとうてい言えない。


 とはいえ、個人的に普段から糖質制限は実施しているので、試しに実際に糖質ゼロ(5グラム以下)にも挑戦してみた。しかし、全く摂らないというのはお腹が空いてたまらないし、忙しい合間に昼食を簡単に済ますことも難しくなるし、エンゲル係数も上がる。野菜や豆すら制限されているからバリエイションも少なくなる。結局、3日坊主にすら及ばなかった。「糖質制限」と「糖質ゼロ」の間の垣根はかなり高いように思う。好き嫌いや科学的根拠の議論はさておくとしても、実際問題として、これを実践するのは相当難しいということは断言できる。

 糖質制限についての本は多くあるので、実践するのであれば普通の糖質制限が良いと思われる。これはお勧めしない。

 

新書、191ページ、洋泉社 、2011/4/6

食べても太らない! 「糖質ゼロ」の健康法 (新書y)

食べても太らない! 「糖質ゼロ」の健康法 (新書y)