密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

Libraの論点がわかる。「リブラの正体 GAFAは通貨を支配するのか?」

著:リブラ研究会(福島良典、落合孝文、唐鎌大輔、鈴木由里、森下哲朗、楠正憲、増田剛)

 

Facebookが発表し、アメリカをはじめ世界の多くの中央銀行・議会・政府関係者から批判を浴びた暗号資産Libraについて7人の識者が解説した本。

 

Libraとはそもそもどういう計画なのか、どうしてこれだけ多くの波紋を生んだのか、どこが問題だと受け止められているのか、脅威と解釈されているのはどうしてなのか、他の暗号資産とは何が違うのか、どのような可能性を秘めているのか、従来の中央銀行を中心とした経済の在り方にどのような影響を及ぼす可能性があるのか、ということが論じられている。以下のような章構成になっている。

 

第1章 フェイスブックの狙い

第2章 リブラの仕組み

第3章 マクロ経済への影響

第4章 規制当局との攻防

第5章 リブラに関する法的問題

第6章 テクノロジー上の特徴

第7章 リブラが呼び起こすデジタル通貨競争

 

第1章はテンセントの例などを挙げて金融決済分野がインターネットを利用した新たな収益ビジネスモデルとして有している可能性について言及し、売り上げの90%を広告に頼るFacebookが巨大な顧客基盤をベースにLibraを新たな事業領域としてとらえていること、リザーブから発生する金利はユーザではなくリブラ協会が得るためそこから発生する金利収入が発生し同時に決済手数料収入も生じる、といった解説がある。

 

第2章では、Facebookの発行したペーパーに基づき、ドル・ユーロ・円・ポンドといった中央銀行が発行する通貨と公債を裏付け資産としてリザーブする仕組みであること、リブラ協会とはどのようなものになるとされているのか、リブラ協会の評議会と理事会の役割といったことを読み解いている。

 

第3章では、経済を担う手段としてのLibraの特徴、新興国では既存通貨への影響が大きくなるかもしれないが先進国ではそうならないであろうこと、中央銀行の金融政策に及ぼす可能性について論じている。

 

第4章では、警戒感の強いアメリカ議会をはじめとした各国およびG7とG20の反応、Libraが発表されてから生じている反発や指摘されている課題について整理している。

 

第5章は、Facebookユーザがカリブラのようなウォレットサービスを通じてLibraを持つことになることを想定しながら、既存の規制や法律においてどのような問題が生じるのかについて述べている。

 

この本は技術的な話はそれほど多くはないが、第6章はFacebookがGithubで公開しているコードを利用してTestNetにアクセスして試してみたことや、すべてのトランザクションがLibra Blockchainを介するわけではないこと、Rustというプログラミング言語で書かれていてスマートコントラクトのMoveに文法が似ていること、BitconやEthereumに比べて性能や機能要件についてはLayer2相当の技術中心になっていることなどが書かれている。

 

第7章は、Libra計画がデジタル通貨競争への刺激をもたらしていることを指摘し、既存金融機関や各国中央銀行においてどのような動きがあるのかについて整理している。

 

それぞれが章ごとに手分けして書いており、体系的に説明しているというよりも、複数の視点をまとめて一冊の本にしているという感じの内容である。また、重複しているところもあるし、読み比べるとマネーロンダリングのリスクのように著者によって意見が同じではないと読めるところもある。Libraについての見識を得るためには役に立つ。

 

単行本、248ページ、日本経済新聞出版社、2019/11/28

リブラの正体 GAFAは通貨を支配するのか?

リブラの正体 GAFAは通貨を支配するのか?

  • 発売日: 2019/11/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)