密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

あなたも今日から教祖様。「完全教祖マニュアル」

著:架神 恭介、辰巳 一世

 

「教祖は決して難しいものではありませんし、特別な才能や資格も要りません。たとえば、ベツレヘムで生まれた大工の息子も、30歳を過ぎてからのたった3年間の活動で、世界一有名な教祖としてサクセスしたのです!しかも、彼には本書『完全教祖マニュアル』はありませんでした。本書を手にした皆さんは、彼よりも遥かに有利なスタートを切ることができるのです。自覚して下さい。あなたのサクセスライフは、本書を手にした今このとき、既にはじまっているのです!」

 

 タイトル通り、「完全」教祖マニュアルである。「思想」と「実践」の重要性を掲げ、読者の前に輝かしい教祖様への道を開いて見せる。

 

 教義は既存宗教の焼き直しでよい。教えを簡略化して、現世利益をうたう。救済を与え、食物制限によってコミュニティに共同意識をつくる。記念日を設定する。あえて義務を与える。権威をうまく使う。

 弱っている人を探す。お金持ちを狙う。コミュニティを作り、イベントを開く。他教を批判する、他教を認める。異端を追放する。出版する。日常生活には不要な品を信仰のために売りつける。免罪符を売る。喜捨を受ける。奇跡を起こす。後世に名を残す。国教化はデメリットもある。

 

 作る側からの視点で宗教を解説したところがユニークだと、著者たちは強調している。あくまでも教祖を目指す人向けのマニュアルではあるが、作る側の視点に立つことで、宗教というのがよくできた仕組みであることを説明していることもアピールされている。もっとも、本書はあくまで「実用書」なので、知的好奇心のために読む読者は少数だろう、ということだ。

 

 本書によって、先の見えない現代に生きる迷える子羊たちにハッピーを与える素晴らしい教祖様が、一人でも育つように、願ってやまない。

 

新書、236ページ、筑摩書房、2009/11/1

完全教祖マニュアル (ちくま新書)

完全教祖マニュアル (ちくま新書)