密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

起業家

著:藤田 晋

 

 サイバーエージェントの創業者である藤田晋氏が、起業家として会社を成長させる中で経験したことや苦労、何をどのように判断し舵取りしたのかを、教訓を交えて綴った本。

 

 ネットバブル崩壊。株を買い占めた村上ファンドによるサイバーエージェント清算の要求と危機脱出。中長期の経営計画に込めた決意と背景。安定しているが利益率の低い広告代理事業からメディア企業への変身の苦労。

 いろいろな買収を見送ったことの功罪から学んだこと。事業は失敗したが、ユーザに向き合う秋元康らから学んだこと。終身雇用を目指すと宣言して辞める若手が少なくなり会社経営が楽になったこと。ビジョンとミッションを明確にし、人事制度と福利厚生を充実させて社内が明るくなったこと。

 

 失敗に失敗を重ねても挑戦し続けたメディア事業。堀江貴文との盟友関係とライバル関係。ライブドア事件があっても堀江氏への態度を変えないようにしたこと。保釈されてすぐ自分のマンションに招いて寿司をふるまったエピソードもある。ネットバブル崩壊の経験があったことが、ライブドア事件の対応を冷静にしたこと。痛感したネットビジネスにおける知名度の重要さ。自分で使ってみることの重要さと使ってみて気づいたこと。意外にやりたい部下に丸投げしたり、技術に口を挟まない時期もあったようだ。

 

 ニューエコノミーの経営者の会議に呼ばれ、話題についていけなかったこと。赤字に苦しみ続けたアメーバブログの黒字化。金融庁のレバレッジ取引規制導入で生じたFX事業の急落。

 採用、育成、活性化。若手社員が多く市場も成長している場合は終身雇用の強みが生きる。経験不足でもやる気のある社内の人材を抜擢して育てた方がネット業界では有益。ネットビジネスの本質は人と時間への投資。撤退のルールをあらかじめ決めておく。買収より自分たちで事業を創って伸ばす。過去の常識をネット業界に持ち込んだら、逆に難しい。経営者の戦略の正しさは、歴史に証明してもらうしかない。新しいサービスやデヴァイスを自分で使って試さないのはネット業界の経営者として失格。

 

 本格参入を検討しながら結局あきらめた金融事業。ソーシャルネットワーキング事業参入のタイミングを逃したこと。新規事業の担当者をアサインして任せる方式が良かった面もあるが、トップダウンで現場と即アイディアを実行に移すことができなかった時代があったこと。いろんな部門を統合して素早く立ち上げようとした発想が実際はアダになりアメーバが大混乱に陥ったこと。

 

 おそらく、金融事業などは、あきらめずに参入していれば楽天・GMO・SBIのように成功していた可能性はあるかもしれない。買収に対しても、慎重すぎたきらいがありかもしれない。Ameba BlogとAbema TVは名前の違いがややこしいし、心血を注いでいるAmeba TVの成長性はよくみえない。ゲーム事業は藤田氏が直接関与したものではなく、部下がやらせてほしいといって成長したようだ。ただ、26歳で東京証券取引所の最年少社長になったのはダテではない。引用されているサイバーエージェント10周年にBlogに書いた記事は、心を打つ。

 

文庫、301ページ、幻冬舎、2015/8/5

起業家 (幻冬舎文庫)

起業家 (幻冬舎文庫)

  • 作者:藤田 晋
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2015/08/05
  • メディア: 文庫