密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

三木谷浩史、楽天を語る。「楽天流」

著:三木谷浩史

 

 楽天の創業者が、起業家として楽天を作った理由、世間で大きな話題となった英語社内公用語、楽天の文化、楽天市場のコンセプトをどうしてあのような形にしたのか、経団連脱退、海外進出、プロ野球の楽天イーグルスやサッカーのヴィッセル神戸を所有することになった理由といったことについて書かれた本。

 

 元々は英語で海外向けに書いたものを、日本語に訳したものだという。原著が出版されると、欧米のメディアの取材を受けたり、Googleなどのインターネット企業のセミナーに招かれたという。

 

 「エンパワメント」を中心とした楽天主義と呼ぶべき企業カルチャーや、お店ごとにネット上に制約の少ないカスタマイズ可能な自由な形で出店できることの意義について、強調してあるところが多い。

 英語公用化も、社内や世間の批判を覚悟で進めて、実際、最初の役員会議は4時間かかったそうだが、トップダウンで押し切ったことでグローバル化を進めるために得るものは大きかったことが説明されている。ハーバード・ビジネス・スクールの教材にも採用されたそうだ。

 

 起業のきっかけが、阪神淡路大震災の被害を見たことだったというのは知らなかった。インターネット論、ソーシャルメディア論、失敗するeコマースが多い中でなぜ楽天が成功できたのかということについても書かれている。「スピード、スピード、スピード」。ボトルネックを探す。リスクの計測。わずか0.5%の違いが大きな差を生み出すことを示す三木谷曲線。フレームワーク。時間の重要性。

 

 起業からの苦労話は少しはあるが、ほんの少しである。楽天の成功を背景に、その姿や主義や哲学的なものを中心に説明した本になっている。

 

単行本、282ページ、講談社、2014/10/8

楽天流

楽天流