密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

日本のカレーが世界に進出?独自の進歩を遂げた意外な特徴「カレーライス進化論」

著:水野仁輔

 

 「ゴーゴーカレー」と「ココイチ」の海外への挑戦。ハウス食品の中国版。中華料理だったラーメンが日本の食文化として独自の進化を遂げたように、カレーは元々イギリスを通じて高級料理として日本に入ってきた。そして独自の進化を遂げ、今や海外進出も行われている。特に、カツカレーは人気らしい。

 カレーに関する著書を既に40冊以上出しているスパイス&カレー専門家によるカレーライス文化についての本である。

 カレーの本場はインドだと考えられているが、インドではカレーライスという切り出した形のものが存在するというより、油とスパイスと塩で素材自体を引き立てて味わうインド料理があるのであって、日本とはずいぶん違う。

 日本では、おいしいカレーを作るためには、玉ねぎをアメ色になるまで炒める、ブイヨンをひく、長時間かけて煮込む、スパイスを30種類以上入れる、カレー粉と小麦粉をオーブンで焼く、隠し味を駆使する、ひと晩寝かせるというテクニックがあるが、これらは全部、日本独特のものである。

 日本人はカレーをよく食べる。信ぴょう性がもうひとつだったりするそうで正確なところはわからないようだが、いろいろな統計がある。本書ではあくまでもひとつの目安として年間4000億円という数字を使っている。

 日本のカレーの特徴はいくつかある。まず、「うま味」や「コク」といった要素である。隠し味にいろいろなものを加えるのもこの例である。欧州には無い「欧風カレー」という分野まである。また、カレーの普及にはお米との相性がカギになったと著者は見ている。

 カレールウという発明も大きかった。香辛料を混ぜたカレー粉を、食用油脂・小麦粉・砂糖・食塩・他をてんこもりにしたものに混ぜ込んで作られたルウの発明は、失敗するのが難しいくらい簡単に安定したカレーを作れるようにした。

 ちなみに、著者によれば、即席カレーには、「スパイシーカレー」「甘口カレー」「コクのあるカレー」「高級カレー」の4種類があるという。さらに、「ボンカレー」を皮切りに1968年にレトルトカレーという分野が生まれた。そして、カレーパンがあり、カレー南蛮があり、カレー味のお菓子もある。

 もうカレーはひとつのプラットフォームである。また、よく誤解されているが、スパイス自体には味付けの作用はなく、あくまで香りをつけるものだという。これがカレーがいろんなものに合わせられる秘密であるようだ。

 ラーメンとの違いについても熱く語られている。ご当地カレーについてもいくつか紹介してあるし、ドリップカレーのような新たな潮流についても激賞している。「技術とはだれもが同じように検証できるものでなければならない」というコーヒー技術について語った田口護氏の言葉を引用しながら、カレーのオープンソース化という発想も披露されている。

 堅苦しい本ではなく、とても面白い。当たり前のように思っているカレーについて、深く考えさせられた。

 

新書、240ページ、イースト・プレス、2017/5/10

カレーライス進化論 (イースト新書Q)

カレーライス進化論 (イースト新書Q)

  • 作者: 水野仁輔
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2017/05/10
  • メディア: 新書