密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

「ザ・モデル」とは何なのか。どうすれば効果を出せるのか。「ザ・モデル」を日本に導入した人がじっくり説明

著:福田 康隆

 

 SaaSやサブスクリプションが重要となってきた現代のビジネスオペレーションの方法論について解説した本。「ザ・モデル」というのは、その中核を占める体制のあり方と方法論で、具体的には以下のような分業および連携の体制を指す。

 

1.マーケティング:キャンペーン等を通じてリードを獲得する。

2.インサイドセールス:電話を中心にリードのクオリファイを行う。

3.営業:クオリファイされた見込み顧客と交渉して受注につなげる。

4.カスタマーサクセス:お客様をつなぎ留め、継続契約やアップセル・クロスセルにつなげる。

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 重要なことは、今まで日本では営業マンの勘と経験に頼りがちだったビジネスプロセスを、それぞれのステージで行うタスクをきちんと決め、システムとしてきちんと管理することである。

 分業することで同じリズムで仕事をすることができて効率がよく、見える化しやすく、各プロセスを担う部門のパフォーマンスを評価する指標を設けることでボトルネックの把握や対策も考えやすい。特に、SMB(中小企業)相手のビジネスでは有効になる。

 

 ただし、新規リードがすぐに数字になるとは限らない。65%は将来買ってくれる可能性があるがすぐにではないという層で、それはそれで継続的にナーチャリングを行うのがよい。一方、失注や未商談のリードにはそれ以上は時間とコストをかけないようにして効果的なセールスオペレーションを保つようにする。

 

 一方、受注に至るプロセスは重要だが、今の世の中は売り切りからSaaSやサブスクリプションモデルが中心になろうとしており、継続的な顧客とのエンゲージメントが重要になってきている。

 また、顧客は自発的にネットなどで情報を集めており、セミナーや口コミや他のユーザの推薦が大きな影響を及ぼすことも少なくない。デジタル技術の進展によって、顧客一人一人の行動をトラッキングし、それぞれに合わせたOne To Oneマーケティングもやりやすくなっている。営業が接点を持つ前に顧客に選ばれる存在になっている必要がある。f:id:ColdSnap:20190920070520p:plain

 

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 ただし、いくら営業プロセスを効率化できたところで、2-3割の受注成功率を6-7割にすることは難しい。売上を2倍にするにはリードの案件を4倍にする、未商談・失注・未フォロー既存顧客をリサイクルするといったことが必要になる。パイプラインやフォーキャストを商談というステージの中で管理する。

 分業体制が対立にならないように、協力せざるを得ない目標を作る。アメリカでは会社全体の売り上げに責任を持つCRO(チーフ・レベニュー・オフィサー)が増えつつある。顧客ステージを作って判定基準を設けて案件を管理する。各階層ごとに見るべきKPIを整理する。

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 商談の際には、「不信・不要・不適・不急」の4つの「不」と、以下のBANT条件はもちろん考慮する必要がある。

  • Budget (予算)
  • Authority (決裁権)
  • Needs (必要性)
  • Timeframe (導入時期)

 

 ただし、現代ではそれだけでは足りない。商談に際しては、以下の4つもきちんと頭に入れておく。

  • 顧客のビジネス課題(ビジネスイシュー)
  • 問題点(プロブレム)
  • 解決策(ソリューション)
  • 効果(ベネフィット)

 

 商談はむしろ前半の方が重要度が高いので、早いうちに経営層に会った方がよい。顧客側の選定条件をこちらが作り出せれば理想である。

  

 顧客にオンボーディングのプロセスと、何をいつしなければないかを示す。

 購入した製品を積極的に活用してもらい、セミナーなどのプログラムにも継続的に参加してもらっているかも目を配り、ユーザコミュニティを盛り上げ、顧客との継続的な関係を作ることで、一度お客様になってくれたお客様をロイヤルカスタマーへと導く。

 そのためには、お客様から学ぼうとする姿勢のある人、社内のハブになれる人をカスタマーサクセスに置くとよい。

 コンサンプションベースの課金は契約時に料金は確定しないので、特にそのような動きが重要になる。そして、チェーン(解約率)を低くし、更新金額や件数を上げるといった指標を見てゆく。

 

 

 市場戦略(Go-To-Market Plan)を立て、適切なリソースマネージメントやパフォーマンスマネージメントを行う。採用と報酬の設計は重要である。

 また、以下のセールスプロセスの要素の中から生産性のボトルネックになっているポイントを探して改善を図るようにするとよい。

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 全体の公平さを保つ。目標と報酬は重要で、適当に決めてはならない。仕組み一つで社員の力はがらりと変わるからだ。

 データで重要なのは、その数字から何が起きているのかを読み取る力。また、数字は瞬間を切り取ったスナップショットよりも継続的にみることが重要。

 

企業経営を考えた場合、マネージメントの立場で重要になるのは、大きくは以下の3つになる。

  • ビジョン:どこへ行こうとするのか
  • ミッション:なぜそこへ行くのか
  • バリュー:なぜその道を選ぶのか

 

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 著者は2004年にセールスフォースの日本の専務執行役員兼シニアバイスプレジデントに就任した経験がある。アメリカの最新のマーケティングをセールスのオペレーションを学んで日本市場をひっぱり、2014年にはマルケトの日本法人の社長に就任している。

 「ザ・モデル」についてちゃんと書いた本を読みたくて買ったが、前半は大枠、後半はより体験に基づいた話が多くなっており、理論と実践の両方の面から書かれている本だった。

 

単行本、328ページ、翔泳社、2019/1/30

THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

  • 作者: 福田康隆
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2019/01/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)