密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

これからの「正義」の話をしよう

著:マイケル・サンデル、訳:鬼澤 忍

 

「正義と不正義、平等と不平等、個人の権利と公共の利益が対立する領域で、進むべき道を見つけ出すにはどうすればいいのだろうか。この本はその問いに答えようとするものである」。

 

 著者は、政治哲学を専門としており、ハーバード大学で人気の「Justice(正義)」の講義を担当している。本書は、その講義から誕生したものだ。

 

 大きくは次の3つの理念を意識しながら、市場、自由、倫理、権利、義務、個人と国家の関係、宗教において、相反する考え方や具体例を紹介しながら、現代における正義のあり方について読者に自主的に考えさせる内容になっている。

・幸福の最大化
・自由の尊重
・美徳の推進

 

 また、その中で、ジェレミー・ベンサム、ジョン・スチアート・ミル、イマヌエル・カント、アリストテレス、ジョン・ロールズの哲学思想のポイントについて、現代における適用例や具体例を列挙しながら分かりやすくまとめている。

 

 表面的にはこの著者は中立的な立場をとりながら様々な視点からの意見やその反論を読者に次々示そうとしているが、同時に自分なりの考え方や哲学も持っており、特に終盤ではそれがくっきりと浮かび上がる。

 また、アメリカの学生向けの講義なので、日本人にはあまり馴染みの無いテーマも登場する。それから、どうやらこの著者はミルトン・フリードマンの思想は過激すぎてあまり好きではないようだ。

 

 全体的には、魅力的な構成と平明な文体で、読者をぐいぐい引き込む仕上がりになっている。面白くて、途中で中断するのが難しかった。論理的で、内容も充実しており、現代版の哲学入門としてもお勧めである。

 

文庫、475ページ、早川書房、2011/11/25

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 作者: マイケルサンデル,Michael J. Sandel,鬼澤忍
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/11/25
  • メディア: 文庫
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