著:高橋 昌一郎
同じ著者の「理性の限界」が大変面白かったので、こちらも読んだ。やはりこっちも大変良かった。
本書で扱われているのは、「言語の限界」「予測の限界」「思考の限界」の3つの限界である。哲学的な内容だが、科学についても書かれている。
ウィトゲンシュタインの理論によると、哲学的な問題だと思われていたことは言語の問題にぎない。
思考は言語に依存するとする第一章。複雑系に基づいて予測の限界を示すと同時に、帰納法や演繹法の矛盾や反証可能性を加えている第二章。宇宙の始まりや神の存在についての議論を交えながら、ポパー、カント、ファイヤアーベント、パスカル、ドイッチュやウィトゲンシュタインなどの考え方を次々披露する第三章。
「理性の限界」もそうだが、著者がいろいろな登場人物を作って対話させるというやり方が、通り一遍の説明とは異なる面白い効果を生んでいる。また、「おわりに」には、大槻義彦氏の主張に対する著者のやんわりとした反論が書かれてある。
とにかく、この「理性の限界」「知性の限界」の二冊セットは素晴らしい。単なる知識だけでなく、理性や知性の本質について、いろいろな角度から考えさせてくれる。知的活動に対してある意味で、とても謙虚にさせてもくれる。見事な本である。
新書、288ページ、講談社、2010/4/16