著:高橋 昌一郎
とても面白い本である。時々頭をフル回転させながら読んだ。本書では以下の3つの限界という視点から、理性の限界に迫っている。
・選択の限界(社会科学の限界):アロウの不可能性原理
・科学の限界(自然科学の限界):ハイゼンベルクの不確定性原理
・知識の限界(形式科学の限界):ゲーデルの不完全性定理
著者は論理学と哲学の専門家。難解なテーマを、実に楽しく、そして興味深く解説することに成功している。
「理性の最後の一歩は、理性を超える事物が無限にあるということを認めること」(パスカル)
この本のポイントのひとつは架空の対話形式になっている点だろう。 会社員、大学生A、科学者、運動選手、カント主義者、映像評論家、国際政治学者他、著者自身も「何人登場させたか自分でも覚えていない」という多彩な人物たちの、ある意味で適当な登場加減が、結果的にいい味を出している。知的な刺激を存分に楽しむことができた。
新書、280ページ、講談社、2008/6/17