著:石ノ森 章太郎
石ノ森章太郎がトキワ荘時代を語った本。2008年に出版されたものを再構成して再販したもののようだ。漫画的な挿絵が時々載っているが、あくまでも文字で書かれている。
子供のころから最大級の読者であり支えてくれた3歳違いの姉が23歳になる直前に死んだ記憶。トキワ荘にやってきたときのこと。『純喫茶エデン』。手塚治虫。高井研一郎。藤子不二雄。料理がうまかった赤塚不二夫。
『漫画少年』への連載。プロとしての実質デビューとなった『少女クラブ』。名古屋での思い出。寿司が嫌いになったカンズメの毎日。漫画家と掛け持ちで動画撮影を機に東映動画に出社。南京虫騒動。トキワ荘時代に描いていたのは半分は少女漫画だったそうで、その読者だった、里中満智子、萩尾望都、竹宮恵子、高橋瑠美子らと交流するようになったこと。
『少女クラブ』と『漫画少年』が休刊する一方、新しい漫画雑誌が次々登場し、仕事の量が一気に増える。苦悩して逃避行もかねて行った世界一周の旅。漫画芸術を目指そうとしてうまくいかなかったこと。結局何からも逃げられないと悟ったあと、「サイボーグ009」が生まれたこと。
寺田ヒロオ。藤子不二雄。鈴木伸一。森安直哉。つのだじろう。園山俊二。赤塚不二夫。横田徳男。長谷邦夫。水野英子。仲間が次々と引っ越していって、ただの雑居アパートになったトキワ荘に残った最後の一人になったこと。「スタジオ・ゼロ」の思い出。
未完成の魅力。「マンガは青春」なのだという。文体は固めで古めだが、内容は面白かった。
文庫、278ページ、中央公論新社、2018/10/23
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