密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

森山大道『にっぽん劇場写真帖』

著:森山大道

 

 1968年に発刊された森山大道の写真集『にっぽん劇場写真帖』が改めて出版された。重厚な大型本で、印刷も良く、巻末にはひとつひとつの作品についてのデータや初出一覧も掲載されており、丁寧に仕上げられている。当然、森山大道の言葉もあるし、寺山修司の文も収められている。

 

 「アレ・ブレ・ボケ」が代名詞の写真家であり、当時写真界に衝撃を与えたこの写真集は、デビュー作であり代表作のようにも言われる。森山大道の作風は独自であり、奇抜であり、今見ても何が写っているのかよくわからない、どうしてこれをこう撮りたいと思ったのか本人にも本当の意味では説明がつかないのではないかというカットがいくつもある。

 

 ただ、同時に、21世紀の日本でこの写真を見ると、やはりこれは写真だな、と思う。それは被写体にある昭和感が証明しており、平成が終わる日本にも意外なほど当時の系譜はそこかしこに残っているとはいえ、やはり同じ時代ではない。いくら森山大道が特殊であったからといって、写真であるかぎりそれは完全な創作ではなくやはり写真である。その点で、森山大道という人がその時代にいて、このように切り取ったことに対して、写真家の個性への敬意とともに、ある種の感謝の念すら沸くし、当時の写真技術の特性と時代背景を考えると森山大道の登場はある種の必然ですらあったのかもしれない。後世に伝える貴重な遺産のリストに載せるべき価値のある写真集である。

 

単行本、232ページ、月曜社、2018/12/19

にっぽん劇場写真帖 (森山大道写真集成(1))

にっぽん劇場写真帖 (森山大道写真集成(1))

  • 作者: 寺山修司,森山大道
  • 出版社/メーカー: 月曜社
  • 発売日: 2018/12/19
  • メディア: 単行本