著:奥村歩
「認知症」とひとことでいっても、実際は、原因はいろいろだ。「もの忘れ外来」に来る人の診断結果の内訳は、以下のようになっているという。
アルツハイマー型 30%
前頭側頭型(ピック病等) 20%
MCI(軽度認知障害) 18%
うつ病など 16%
レビー小体型 9%
その他 7%
ボケは食生活を含む生活習慣と深くかかわっており、予防に勝る治療は無い。血中コレステロールが高いと動脈硬化だけでなく、ボケにもなりやすい。食事は腹八分目。野菜・果物はジュースの形で摂っても効果がある。著者は8つの技術を推奨している。
1.座禅術
2.プラスアルファ散歩術
3.ながらモーツァルト術
4.赤ワインパーティ術
5.2種類の旅行術
6.思考パターンの修正術
7.腹すっきりボケ予防術
また、全米アルツハイマー協会による「脳を健やかに保つ10か条」というのも紹介されている。
1.頭を第一に: 健康は脳から始まる
2.脳の健康は心臓から: 糖尿病対策など、心臓に良いことは脳にも良い
3.測定値を大切に: 体重、血圧、コレステロール、血糖を健全に保つ
4.脳に良い栄養を: 脂肪が少なく、抗酸化物質を豊富に含む食品を摂る
5.身体をよく動かす: 運動は血液の循環を健全に保ち脳にも良い
6.心に適度な刺激を: 読み書き、ゲーム、クロスワードパズルなどで脳を刺激
7.人とのつながり: ボランティア活動、クラブ活動、学習会
8.脳のけがに注意: 自動車のシートベルト着用など脳のけがに注意する
9.習慣の見直し: 喫煙、過度の飲酒、薬物は避ける。
10.将来のために今日から: 将来を守るために今日できることを心掛ける
認知症にかかると、自分自身では身体維持ができなくなるので、身体機能低下にもつながりやすい。小さな脳梗塞でもボケにつながる。
日本では1990年代までは脳血管障害とアルツハイマー病が同程度であったが、今ではアルツハイマー病と診断される方が多くなっている。
また、近年は、神経画像診断ができるようになり、診断精度は向上している。神経画像診断は、認知症予備軍の発見にも役立つことが期待されている。
ボケに対しては、兆しが出たら、福祉と医療の両面で最善の策をとる必要がある。認知症を抜本的に治療する薬はまだ出ていないが、進行を遅らせることはできる。
特に、予備知識なしで読める本である。イラストも挿入されている。今は認知症とは関係なくても、認知症対策をしておくことは将来の認知症のかかりやすさに作用する。認知症は根治させる方法が無いので、なりたくなければ、元気なうちから対策をとって予防に努めるしか方法がない。だから、「ボケない技術」が重要なのだ。認知症への理解を深めるとともに、予防の重要性についても再認識させられた。
単行本、240ページ、世界文化社、2018/9/26