密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

宇宙は無から始まった。「宇宙が始まる前には何があったのか? 」

著:ローレンス クラウス、訳:青木 薫

 

 「なぜ何もないのではなく、何かが存在するのだろうか?」ということに対する答えのひとつは、「存在するとはいっても、長くはない」ということになるのだという。

 

 我々が住んでいるこの宇宙はかつて無(時間や空間も含め)とみなされたものから生じたということを、量子論・相対性理論・万有引力の法則といった法則や、著者自身の業績も含む様々な研究成果や有力な仮説を紹介しながら説明した本。

 同時に、マルチユニバースや物理法則はそもそもどこから来たのかといったことについても踏み込み、さらには神学論争にも言及している。

 著者はアメリカの高名な物理学者。これは文庫版で、ヒッグス・ポソンの存在の確認を受けたペーパーバック版のまえがきも反映されている。

 宇宙の膨張。ダークマター。ダークエネルギー。アインシュタインの宇宙項。ビッグバン。マイクロ波背景放射。赤方偏移。インフレーション宇宙論。量子ゆらぎ。平坦な宇宙。マルチバース。2兆年後の未来の宇宙。

 


 訳者解説に、著者の関心は「宇宙の始まりから終わりまで」だという著者の言葉が紹介している。まさにそんな感じの本であって、宇宙という大きな存在を、過去も未来も時空も超えてマクロ的な視点で一望する著者の説明は非常にダイナミックであり、ひきつけられる。

 同時に、この本を読むと、我々が生きている今という時間が極めて一瞬であり、大きな大きな宇宙の物語の前には本当に微小なものであることにも気づかせてくれる。

 

 科学者らしい正確さへのこだわりは失わずに、多少冗長ながらも、徹底的に本質を突こうとする語り口も魅力的である。とてもいい本だった。

 

文庫、343ページ、文藝春秋、2017/1/6

宇宙が始まる前には何があったのか? (文春文庫)

宇宙が始まる前には何があったのか? (文春文庫)

  • 作者: ローレンスクラウス,Lawrence Krauss,青木薫
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/01/06
  • メディア: 文庫