密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

ラム酒の歴史

著:リチャード・フォス、訳:内田 智穂子

 

 ラム酒は蒸留酒であり、原料はサトウキビである。生のサトウキビを絞ったジュースから作るものと、サトウキビを煮詰めて砂糖を分離したあとの糖蜜から作るものの2種類がある。ただ、生サトウキビのジュースは生産性が悪いうえに熟した新鮮なジュースが取れる時期しか造れないので高価であるため、ここから生産されるラム酒は全体の10%を占めるに過ぎない。一方、糖蜜はサトウキビから砂糖を作るときの廃液であり、貯蔵も運搬も簡単であるため、糖蜜を原料を利用するラム酒の方が圧倒的に多い。

 

 「食」の図書館シリーズの一冊。著者の若いころの年上の女性との恋の思い出がラム酒の出会いだそうだ。ラム酒は、サトウキビ生産が活発になり、砂糖精製の際に出る廃液を利用して簡単に作れることから自然に広まった。まずはポルトガルが、次いで、スペイン・イギリス・フランスが新大陸に奴隷を輸入してプランテーションでサトウキビを栽培しはじめた。ラム酒に関しては当初の記録はあまりないようだが、1664年以降はニューヨークやボストンで蒸留の記録が出てくる。アメリカには蒸留の際に必要となる木材が豊富にあったので、糖蜜を運んでラム酒造りがおこなわれるようになったようだ。

 ラム酒は三角貿易にも関係する。サトウキビから砂糖をつくる際の廃液の糖蜜がニューイングランドへ輸出されてラム酒となり、ラム酒は奴隷を買うためにアフリカに送られ、アフリカ人奴隷は糖蜜の原料になるサトウキビを栽培するためにカリブ海諸島や南アメリカに送られた。

 

 

 ラム酒は、ヨーロッパの植民地だった新大陸、アメリカ独立戦争、海賊、海軍の歴史においてわき役を演じる酒となる。ただし、フランスは一時ラム酒貿易を禁止したため技術的に後れをとって大きな機会損失を生じることになった。イギリスやアメリカで禁酒運動がおきたときには、一時的に衰退したこともあった。

 

 現代ではラム酒は世界で好まれている。そのままでも飲まれるが、カクテル用にも利用されている。19世紀のアメリカではラム酒を使ったレシピがいくつも生まれ、現代でも料理やデザートに利用されている。最近は粗悪なラム酒は減り、ブランデーやウィスキーのように地位は向上しているという。訳者あとがきでは、日本のラム酒といえる黒糖焼酎について言及されている。

 

単行本、187ページ、原書房、2018/8/21

ラム酒の歴史 (「食」の図書館)

ラム酒の歴史 (「食」の図書館)

  • 作者: リチャード・フォス,内田智穂子
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2018/08/21
  • メディア: 単行本