著:岸 恵美子
「セルフ・ネグレクト」というのは、自分自身へのネグレクト、つまり自分や身の回りのことをせずに自己を放置・放任して健康や安全が損なわれてしまう行為のことをいう。いわゆる「ゴミ屋敷」の住人にはこのような人が多く、認知症などとも関係する場合があり、慢性疾患にかかっている人が4割。かつ孤独死の事例の8割がセルフ・ネグレクト状態の人によるものだという。著者は、セルフ・ネグレクトなどを研究している看護学博士。
難しいのは、支援を申し出ても拒絶する人が多い点。他人とのかかわりや、福祉サービスの説明すら拒否されることがあるという。本人の意志や権利は尊重せざるをえないため、福祉の専門職すらどう対応すればいいのか困ってしまうことがあるようだ。
本書には、セルフ・ネグレクトの具体例がいくつも紹介されており、配偶者を亡くしたショック、経済的困窮、認知力の低下、生きる意欲の喪失、引きこもりからの移行、世間体やプライドから助けを求めないといった、いろいろなケースがあることがわかる。セルフ・ネグレクトについて理解するにはとても分かりやすくてよい本だ。ただ、内容はいいのだけれど、このタイトルのつけ方にはちょっと疑問を感じた。
新書、182ページ、幻冬舎、2012/5/30