密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

日本の捕鯨の歴史を知る。「くじら取りの系譜―概説日本捕鯨史」

著:秋道 智彌

 

 日本の捕鯨の歴史を紹介した本。地方によってかなり差はあるものの、主要な漁場を中心にみるとざっと以下のような歴史をたどったようだ。

・縄文時代:イルカは獲っていた跡がある。鯨については骨は出てくるものの漂着したものを利用しただけではないかという意見もあり、はっきりしない。
・弥生時代と古墳時代:銛で突かれた鯨の線刻図や、銛先や鯨の骨を利用した道具が出土する。
・中世:積極的な捕鯨の記録は無い。流れ鯨や寄鯨の利用の記録はある。鯨油の記録や、室町時代には鯨料理の記録もさまざまな書物に登場する。
・アイヌ:鯨、アザラシ、イルカを捕獲していた。
・戦国時代後期:古式捕鯨時代の幕開け。突取捕鯨法。知多半島の師崎が今のところ一番古い。17世紀中期までに紀伊半島、土佐、安房、西海の四大漁場が開拓。
・17世紀:戦乱が収まり、鯨油などの需要が増えて輸送航路の安全確保と整備も進み、消費が拡大。突取組の捕鯨業が全盛期を迎える。
・17世紀後半:太地で網掛突取捕鯨法が確立。網組みの組織化が進む。
・19世紀中盤:欧米の捕鯨船進出で、鯨漁の不漁が慢性化。鯨組が次々経営不振になる。
・19世紀後半:ジョン万次郎が欧米式の捕鯨を進言。日本周辺に進出した各国捕鯨船が寄港地を求めて日本に開国を迫る。
・近代:ノルウェー式砲殺捕鯨法が広がる。

 捕鯨の伝統は主に西日本が中心。魚の定置網に鯨がかかることはよくあった。赤肉より白肉の方が人気があった。江戸時代に鯨油は農薬としても利用された。網組は大きなチームが必要で、その経営には1シーズンだけでも数千両が必要だった。捕鯨見物の記録、捕鯨や鯨にまつわる各地の伝説や芸能の紹介もある。興味深く読めた。

 

新書、223ページ、長崎新聞社、2006/07

くじら取りの系譜―概説日本捕鯨史 (長崎新聞新書 (001))

くじら取りの系譜―概説日本捕鯨史 (長崎新聞新書 (001))

  • 作者: 中園成生
  • 出版社/メーカー: 長崎新聞社
  • 発売日: 2006/07
  • メディア: 新書