編:PIE BOOKS
世界の教会を写真で紹介した本です。小さめのサイズですが、オールカラー。印刷は良好で、いろいろな教会の鮮やかな写真が次々目に飛び込んでくる感じです。
湖の中に浮かぶスロベニアの「聖母被昇天教会」とか、ドイツの「聖コロマン教会」が雪景色に浮かぶ姿は、まるでおとぎ話のようです。12世紀のノルウェーの「ウルネスの木造教会」は木でできていて壁板を重ねるヴァイキング様式。ブルガリアの「リラ修道院」の形と鮮やかな壁画は東欧的です。サンクトペテルブルグの「血の上の救世主教会」の豪華さはスラブ的な個性の塊です。
完成まで2世紀を要したというメキシコの「サント・ドミンゴ教会」の内装は、先住民族的な要素とバロック様式を合わせた他ではちょっと見られないようなものです。建築に時間がかかっている教会としては、まだ現在進行形のスペインの「サグラダ・ファミリア」が有名ですが、もちろん載っています。同じくスペインのモスクから転用された「メスキータ」も有名ですね。
ドイツの「シュタインハウゼン巡礼聖堂」のロココ様式の天井フレスコ画は美しいです。イタリアからは、ヴェネチアの「サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会」や、「サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂」、「サンマルコ大聖堂」などが紹介されています。エーゲ海に浮かぶ白い「パラポルティアニ教会」もあります。
地面をくり抜いたようなエチオピアの「聖ギョルギス教会」の岩窟教会はすごいです。6世紀に建てられたというエジプトの「聖カタリナ修道院」には初期キリスト教聖書の貴重な写本が保管されているそうです。ボリビアの「イエズス会伝道所群」というのはこの本を読むまで知りませんでしたが世界遺産だそうです。
この本の特徴として、20世紀以降の教会もたくさん紹介されていることがあげられます。昔の重厚な教会とはひと味違うユニークな建物がたくさん登場します。
アメリカの「チャペル・オブ・ホーリー・クロス」は岩に食い込んだ十字架をモチーフにしたデザイン。フィンランドの「テンペリアウキオ教会」も岩盤を巧みに使った構造です。
ブラジルの「カテドラル・メトロポリターナ」は有名ですが、中央に集まって上に向かって開く16本の白い柱は祈る手をモチーフにしているのだとか。フランスの「サン・ピエール教会」は途中放置されていたのですが設計したル・コルビュジエの死後41年後に完成。イタリアの「ジュビリー教会」は2003年に作られた3つの帆をイメージしたもの。
日本の教会もなかなかです。「函館ハリストス正教会」の雪景色はきれいですし、島根県の「乙女峠マリア聖堂」は「浦上四番崩れ」といわれる弾圧において浦上村の隠れキリシタンたちが幽閉された場所に建てられています。丹下健三の代表的な建築のひとつである「東京カテドラル関口教会」も載っています。
写真中心の構成であって解説は必要最小限といった感じですが、個性的な教会が多くて、なかなか堪能できました。
単行本、208ページ、パイインターナショナル、2016/11/22