密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

当時のスタッフやキャストが次々亡くなる中、アンヌ隊員役だったひし美ゆり子さんが「私が書いておかなくちゃ」という気持ちとともに書いた本。『アンヌ今昔物語: ウルトラセブンよ永遠に』

著:ひし美 ゆり子 

 

 『ウルトラセブン』のアンヌ隊員役だったひし美ゆり子さんのエッセイ。ひし美さんの本は、かつて「セブンセブンセブン―アンヌ再び…」を読んだことがある。内容的にはどちらもウルトラセブンの話が中心であるのだが、さらに十数年以上を経て作成されている分、こちらはこちらで近年いくつも開かれてきたウルトラセブンのイベントでの話や、新たな対談、過去のDVDを見直して思い出したエピソードや、その後の昔の関係者との会話でわかったことを交えた解説があり、切り口が若干異なる。したがって、こちらはこちらで十分楽しめた。

 何しろ、ひし美さんですら、ウルトラセブンには、49年、50年たっても、新たな発掘や新発見があるのだという。また、キリヤマ隊長はじめ、当時のスタッフやキャストが次々鬼籍に入っており、「私が書いておかなくちゃ」という気持ちも募らせていたのだという。

 

 最初の撮影が終わり、化粧を落としたら、照明技術の人から、「なんだっ、スッピンだと綺麗なんじゃないか」と言われるくらい化粧が下手だったこと。髪型もおかしいと言われて途中で変わってしまって、つじつまを合わせるため髪を下すシーンを撮影したこと。 

 先にアンヌ隊員に決まっていながら、映画の撮影を優先して降板した豊浦美子さんとの対談。彼女は、ひし美さんも失くしている「レッドマン『緑の恐怖』『美しき侵略者』」の台本を持っていたという。

 

 ロケバス専用の運転手の瀬戸という人は息子に「ダン」と名付けた。キュラソ星人が外国人女性を襲った出光のガソリンスタンドはまだ健在で、家に近いためにひし美さんは給油に使っており、事情をよく知らない今の店長が「よくカメラを向けて撮っている人がいますが、どうしてなのでしょう?」と言っているとのこと。スタッフと夜な夜な飲み会をしていて監督にお灸をすえられ、出番が無かった回のこと。

 

 長らく欠番になっている幻の第12話「遊星より愛をこめて」の封印を解いて欲しいと共に願っているうちに、実相寺昭雄監督が鬼籍に入ったことを残念がっているところもある。キングジョーを破壊する爆弾を発明するドロシー・アンダーソン博士を演じた当時アメリカからの留学生だったリンダ・ハーディスティという女性のその後がわかったが、39歳で亡くなっていたとのこと。ちなみに、彼女は「キイハンター」の第1話にも出ていてそちらでは肉声が聴けるという。また、チーフ助監督から監督に昇格した安藤達巳さんは亡くなる5日前にブログでウルトラセブンのエピソードを書ききっていたという。

 

「ぜひ、ダンにも自分の視点で各エピソードを語った本を出していただきたいものです。ダン!私たちには、『ウルトラセブン』を永遠に語り継ぐ使命があるのですよ!!」

 

 普段は本編班と特撮班が別々に撮影するが、21話と22話は特撮班が撮影したとのこと。ドラマ『私が愛したウルトラセブン』の後日談。「ひとりぼっちの地球人」のロケに使われた学習院の中央校舎建て替えのイベントで、皇太子殿下が満田監督に、「ソガ隊員、アンヌ隊員、懐かしいですね」と話したという逸話。以前のエッセイでの記憶違いを訂正している箇所もいくつかある。

 飯島監督の「セブン暗殺計画」で、ウルトラセブンがはりつけになった場所は、力道山が買ってゴルフ場にする予定だったのが力道山の死とともに宙に浮いていたところだった。「第4惑星の悪夢」の憲兵のような軍人が口でアメをころがしながら鞭を持っていたのは「アメとムチ」の意味?この話は個人的にも好きである。最終回の「史上最大の侵略」は名作として名高いが、演じている俳優たちはぶつ切りにカットを取り、ひとつの仕事が終わればまた次の仕事へ移っているので、当時はそのような意識はなかったのだという。

 

 最後は、ブログ「あれから50年・・アンヌのひとりごと」から抜粋したもの、さらに特別書下ろし、上原正三氏、手塚昌明氏、著者のあとがきがある。

 

単行本、256ページ、小学館、2017/7/3

アンヌ今昔物語: ウルトラセブンよ永遠に・・・

アンヌ今昔物語: ウルトラセブンよ永遠に・・・

  • 作者: ひし美ゆり子
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2017/07/03
  • メディア: 単行本