密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げました。日々読んできた本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介及び読書感想をまとめたブックレビューのブログです。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

ザ・ビートルズ(The Beatles)の名盤はこうして生まれた!「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の誕生秘話の数々と時代背景。「サージェント・ペパー50年」

著:マイク・マッキナニー、ビル・ディメイン、ジリアン・G・ガー、監修:藤本国彦、井上ジェイ、訳::間けい子

 

 ザ・ビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」は、ライブ活動を休止したビートルズのメンバーが、レコード会社ではなく自分たち主導でじっくり時間をかけて作り上げたコンセプトアルバムである。

 半年に1枚はアルバムを出すのが常識だった当時、人気のビートルズが10か月以上間を開けたこと自体が様々な憶測を呼んだらしい。ポール・マッカートニーは当時をこう振り返っている。

「ある日、新聞の記事にこう書かれているのを目にしたんだ。ビートルズはアイディアも底をつき、新しいものはなんにも生まれてこない。スタジオにこもってただ時間を浪費している、とね。それを見て僕はもみ手をしながら、『今に見てろよ』って言ったものさ」(ポール・マッカートニー)

 
 ポピュラー音楽の歴史に残る名盤「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」誕生の歴史についてまとめられた本である。3人の著者の共著となっている。

 構成としては、4つの章に分けられており、この名アルバムが生まれた時代背景、ビートルズの状況、アルバムの制作過程、録音のエピソード、発売されてからの大反響、一時不当なレッテルが張られた時代を経てビートルズの残したアルバムの中でも傑作中の傑作であるという評価が定着してゆくまでのことが書かれている。

 

「飛行機のなかで突然思いついたんだ。今の自分たちでいるのはやめよう。もうひとりの自分を作り出せば、わかりきった自分のイメージを打ち出す必要もないからね。もっと自由になれるってね」(ポール・マッカートニー)

 

「『サージェント・ペパー』は初のコンセプト・アルバムと言われている。だけどそれだけ。。。。僕自身はペパー軍曹と彼のバンドというアルバムのアイディアに関係なく曲を書いた。だけど、それでうまくいったと僕らが言うのだからうまくいったんだ」(ジョン・レノン)

 

「今、僕らが演奏するのはスタジオだけで、よそでやることがないから、ヒントになるものも少ない。スタジオに入って、ゼロから始めなきゃならない。とことん話し合って、すごく苦労してやっているよ」(ジョージ・ハリソン)

 

「僕は『サージェント・ペパー』の制作中、ロードマネージャーたちとしょっちゅうチェスをしていた。天才たちが、ハーモニーやオーケストラのパートを入れるのに長い時間を要したから、僕にしてみれば曲はもう出来上がったのも同然。タンバリンの音を入れるのに何日も待たされたけどね」(リンゴ・スター)

 

「『サージェント・ペパー』は音楽の手りゅう弾だった。その凄まじい爆発力を今も感じ取ることができる。このアルバムはポップ音楽の首根っこをつかみ、激しく振り回し、フラフラなのに尻尾を振ったままの状態で放り出した」(ジョージ・マーティン)

 


 大きめのサイズになっていて、写真が豊富。また、ビートルズだけに焦点を当てるのではなく、LSDが流行り、サイケデリックなものが好まれ、口ひげを生やすことが流行り、奇抜なデザインの絵が好まれたというような時代背景についても、見方によってはちょっと多すぎるのではないかと思うくらい書かれている。結果として、単なる名盤紹介にとどまらない内容になっている。

 また、当時は録音に使える新たな技術が数多く登場した。ビートルズはライブ活動を中止しており、このアルバムに全精力を注げるだけの時間を確保できた。名声も確立しているため、レコード会社に余計な口を出させず作りたいと思うものを追求できた。経験を積み、新しいものを作りたいという意欲とその下地となる実力も気力も充実していた。100人規模は縮小したが40人規模のオーケストラを雇ったりもした。ビートルズのメンバーたちはそれぞれの音楽を追求する気持ちが強く芽生えていたが、その後の分裂に至るまでにはなっておらず、協力しあった。ジョージ・マーティンも健在だった。

 今、この本を読んで思うのは、そんなすべてがこのアルバムの誕生に寄与したのだということだ。個人的も、ザ・ビートルズのアルバムの中でもっとも好きなアルバムなのだが、こうやって振り返ると、このアルバムの誕生自体がひとつの奇跡のように思えた。

 

大型本、176ページ、河出書房新社、2017/6/26

サージェント・ペパー50年

サージェント・ペパー50年

  • 作者: マイク・マッキナニー,ビル・ディメイン,ジリアン・G・ガー,藤本国彦,井上ジェイ,野間けい子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/06/26
  • メディア: 大型本