密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものと考えており、このブログを立ち上げました。日々読んできた本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介及び読書感想をまとめたブックレビューのブログです。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

サツマイモの世界 世界のサツマイモ: 新たな食文化のはじまり

著:山川 理

 

 日本の食料輸入が止まったらどうすればいいか。実際にそのようなシミュレーションが日本国で行われたことがある。著者はそのプロジェクトのまとめ役を担った。

 その結果、食糧危機があっても計算上はサツマイモを200万ha以上作れるので、必要カロリーはなんとかまかなえることがわかったという。実際、サツマイモは、日本の江戸時代や戦中戦後の食糧難の時代でも飢えをしのぐために大きな役割を果たしてきた。

 サツマイモの本。サツマイモは、野菜と穀物の両方の特性をもった準完全食品で、栽培が簡単。茎に空中の窒素を取り込む内生窒素固定菌が棲んでいるため窒素肥料が少なくて済む。農薬はほとんど無くても育つ。葉も茎も全部食べられる。また、連作障害を起こしにくい(起こさないということではない)。しかも、収量性が高く米の3倍くらい収穫できる。加えて、干ばつや台風、病害虫に強い。ビタミンやミネラルや食物繊維が豊富で栄養価も高い。まさに、いざというときに役立つ頼もしい食料源である。

 比較的暖かい地域に向いており、ジャガイモが適した地域とは補完関係にある。ただし、タネで増やすことが難しいので大量に自動で植え付けるということはできないし、収穫も機械だけでは難しい。つまり、大規模栽培には向いていない。

 種類は多い。世界全体で遺伝子が保存されているサツマイモの栽培品種は2000~3000点。日本だけでも1000~1200点で、野生品種も含めると1500点くらいだという。

 かつて日本ではサツマイモはでんぷん材料として大量に使用されたが、現在はそれほどでもない。

 食用でみると、日本は焼きいもやふかしいもが中心だが、世界的にはゆでてそのまま食べたりつぶしたり揚げて食べることが多い。スイーツ材料としても利用されているしジュースで飲む国もあるが、日本のように羊羹や飴や干し芋や和菓子や洋菓子に幅広く使っている国はない。

 世界の栽培量の7割は中国で、でんぷん加工、家畜のエサでの用途が多いようだ。

 日本で好まれるサツマイモの品種は変わってきた。戦中・終戦直後に中心だったサツマイモはあまりおいしくなかったようだが、今はおいしい品種がいろいろある。ほくほく感が重視されてきて、今はねっとり感のある品種がかなり好まれている。また、ポリフェノールを多く含んだ紫色の品種が人気である。

 著者は長年サツマイモやイチゴの研究を行って新たな品種を生み出してきた研究者。正直、本としてのまとまりはあまり良いとはいえないが、内容自体は悪くないし、著者の研究者としての経験やエピソードも多く含まれている。サツマイモがユニークな特徴を持った有益な植物だということがよくわかった。

 

単行本、243ページ、現代書館、2017/3/6

サツマイモの世界 世界のサツマイモ: 新たな食文化のはじまり

サツマイモの世界 世界のサツマイモ: 新たな食文化のはじまり

  • 作者: 山川理
  • 出版社/メーカー: 現代書館
  • 発売日: 2017/03/06
  • メディア: 単行本