密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

カタログ的な本ではなく、兵器としての戦車の汎用知識がよくまとまっている。「図解 戦車 (F-Files No.012)」

著:大波 篤司

 

 戦車の本。地味なつくりだが、よくある、こういう戦車があるというカタログ的な説明の本ではなく、テーマごとに戦車という兵器がどのようなものであるかを丁寧に説明したものになっている点が良い。

 

 攻撃力・防御力・機動力。カタログではわからない、コスト・技術的信頼性・戦略的機動性・通信探索能力の重要性。どんなにミサイルや航空戦力が進歩しても最後に地上戦で占領するには戦車は不可欠。カノン砲の特徴、口径長。砲身の排煙器などの必要性、熱によるゆがみを測定しコンピュータで照準を制御する。現代の成形炸裂弾とライフリングのない滑腔砲。稜線射撃。測距儀。FCS(Fire Control System)と自動装てん装置。第三世代MBTでは一般的な交戦距離は1500-2000mだが、遮蔽物がなければ5000mまで射撃可能。戦車は先に相手を見つけて攻撃する方が有利。

 

 正面が堅固で後部や上面や底面の装甲はそれより薄い。自走砲と戦車の違い。鉄鋼装甲。複合装甲。増加装甲。戦車の出入り口は複数ある。戦車の密閉度。

 

 キャタピラはタイヤよりはるかに接地面積が広いので重さを分散させることができる。ティガーIでは、転輪部分の軸を増やし内外で多重にする工夫をした。トーションバー・サスペンション。1.5mくらいの水深であれば走行可能。冷却は現代では水冷が主流。戦車の操縦の仕組みと操縦席。現代の戦車はディーゼルが普通。燃費は昔も今もリッター1km未満。長距離移動には不向きで、昔であれば鉄道、今であればタンク・トランスポーターを使う。渡河を行うための車両、壊れた戦車を回収する戦車回収車。

 

 対戦車砲とは。突撃砲。戦車駆逐車。駆逐戦車。対戦車攻撃機。対戦車攻撃ヘリ。対空戦車。バズーカ。無反動砲。対戦車擲弾発射器。対戦車ミサイル。対戦車障害物。対戦車地雷。歩兵と戦車の連携の重要性。装甲兵員輸送車と歩兵戦闘車。

 

 テーマごとに、見開きで左ページが解説、右ページが図解という構成になっている。図解が多いとはいえ、写真は無く、カラー印刷でもない。しかし、戦車についての汎用的な知識がまとめてあって、とても良い。

 

単行本、232ページ、新紀元社、2007/12/21

図解 戦車 (F-Files No.012)

図解 戦車 (F-Files No.012)

  • 作者: 大波篤司
  • 出版社/メーカー: 新紀元社
  • 発売日: 2007/12/21
  • メディア: 単行本
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