密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

ほんとうは、日韓併合が韓国を救った! (WAC BUNKO)

著:松木 國俊

 

 以前は取り立てて問題にしていたわけではない旭日旗を戦犯旗だというキャンペーンを世界的に始めたりするなど、韓国側の歴史認識はかえってひどくなっている面もあるが、日本国民の日韓併合時代の歴史認識についてはこの本のオリジナルが出た頃から少しづつだが変わってきたように思う。慰安婦問題で徹底的に誇張して日本を世界で貶めることに国を挙げている姿に、さすがに何かがおかしいと気づき始めた人も昨今は増えてきた。

 日韓併合の経緯と日本の統治時代の実際の姿が、現在の朝鮮半島や日本で喧伝されているものとは異なっている点が多くあることを説明した本。著者は元商社マン。韓国駐在経験があり、通訳をつとめることもあるそうで、朝鮮民族の気質や韓国側の実情にも詳しい。

 国立国会図書館などで探した資料と一般書籍からの引用に基づき平明な記述を心がけて書かれており、かなりわかりやすい。また、それぞれの解説の根拠がどのような資料や情報に基づくものなのか、出典をいちいち丁寧に示してしている点が何より好ましい。適時、新聞記事や当時の資料のコピーも掲載してある。

 日韓の歴史認識問題についていえば、韓国寄りもしくは左寄りの思想に染まった本の主張には、「根拠は?」と問いながら読むと、結構あいまいなものがたくさんある。その分、「強制労働」などと、その当時は使っていないレッテルを張ることで言葉の印象操作で歴史を書き換えてしまっている。国を持っておらずアウシュビッツをはじめとする収容所で数百万人が処刑されたユダヤ人の悲劇と韓国人を一緒にして日本を悪者にするという論法も滅茶苦茶である。

 しかし、この本は左派的な空気が日本でも普通だった時代に書かれているので、きちんと反論できるように裏付けの資料について丁寧に述べているところが良い。

 結果的に、日韓併合に関する歴史認識の誤りを指摘した主要本のダイジェスト的な内容にもなっているため、この問題にそれほど明るくない人にとっても敷居が低く、何がどうおかしいのかという点が具体的に把握しやすい。

 ただ、主要な論点に的を絞って解説している本なので、当時の歴史を全体的に理解するためには他の著作も併読する必要があると思われる。また、例えば、独立運動を厳しく取り締まるのは、欧米各国も植民地では普通にやっていたことで、世界的に帝国主義が当たり前だった時代としては当然のことであって、解釈の点においてはちょっと美化しすぎなところはあるかもしれない。

 

新書、268ページ、ワック、2013/10/18

[新版]ほんとうは、日韓併合が韓国を救った! (WAC BUNKO)

[新版]ほんとうは、日韓併合が韓国を救った! (WAC BUNKO)

  • 作者: 松木國俊
  • 出版社/メーカー: ワック
  • 発売日: 2013/10/18
  • メディア: 新書