密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

特攻の記録―「十死零生」非情の作戦 (光人社NF文庫)

編集:「丸」編集部

 

「彼らは、だれ一人として、泣かなかった。泣いたのは見送る私たちだった」。


特攻の記録である。

犬死とか、成功率が低かったとか、

特攻隊をしたり顔で非難する人たちは終戦当時からいる。

しかし、そんな人達は、一番重要なことがわかっていない。

太平洋戦争終盤の米軍は、質・量共に、開戦当時とは桁違いの強敵になっていたということを。

通常攻撃で戦況を打開しようという試みは、何度も何度も行われている。

しかし、当時の日本の全力を尽くした努力は、

日々増強され圧倒的な戦力になった強大な相手の前に、

犠牲を増やし、無残な結果を生むだけになった。

こんな作戦が外道であることは、

戦争のプロである当時の軍人たちが、

一瞬に人生の全てを賭けた若者達自身が、

最もよくわかっていた。

同時に、もう、それ以外の方法はないのだということも。

本書を読む人は気付くだろう。

特攻隊が米軍に与え続けた恐怖は、

けして小さなものではなかったということを。

未来の日本のために、

この国のために、

若くして散った命の純粋な気高さを。

そして、今の日本が、

今の日本のひとりひとりの人生が、

特攻機からのツーという押しっぱなしの無線が途切れた瞬間の、

尊い犠牲と、きっと、どこかでつながっているということを。

 

文庫、309ページ、光人社、2011/1/1

特攻の記録―「十死零生」非情の作戦 (光人社NF文庫)

特攻の記録―「十死零生」非情の作戦 (光人社NF文庫)

  • 作者: 「丸」編集部
  • 出版社/メーカー: 光人社
  • 発売日: 2011/01/01
  • メディア: 文庫