編集:「丸」編集部
「彼らは、だれ一人として、泣かなかった。泣いたのは見送る私たちだった」。
特攻の記録である。
犬死とか、成功率が低かったとか、
特攻隊をしたり顔で非難する人たちは終戦当時からいる。
しかし、そんな人達は、一番重要なことがわかっていない。
太平洋戦争終盤の米軍は、質・量共に、開戦当時とは桁違いの強敵になっていたということを。
通常攻撃で戦況を打開しようという試みは、何度も何度も行われている。
しかし、当時の日本の全力を尽くした努力は、
日々増強され圧倒的な戦力になった強大な相手の前に、
犠牲を増やし、無残な結果を生むだけになった。
こんな作戦が外道であることは、
戦争のプロである当時の軍人たちが、
一瞬に人生の全てを賭けた若者達自身が、
最もよくわかっていた。
同時に、もう、それ以外の方法はないのだということも。
本書を読む人は気付くだろう。
特攻隊が米軍に与え続けた恐怖は、
けして小さなものではなかったということを。
未来の日本のために、
この国のために、
若くして散った命の純粋な気高さを。
そして、今の日本が、
今の日本のひとりひとりの人生が、
特攻機からのツーという押しっぱなしの無線が途切れた瞬間の、
尊い犠牲と、きっと、どこかでつながっているということを。
文庫、309ページ、光人社、2011/1/1