密林の図書室

日々読んでいる本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介及び読書感想をまとめたブックレビューのブログです。人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものと考え、このブログを立ち上げました。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

「太平洋戦争」アメリカに嵌められた日本

著:マックス・フォン・シュラー

 

「私はアメリカ生まれだが、基本的にアメリカ人は他国に興味がなく、自分たちのことだけを考えている人が多い」。

 

「(アメリカは)別に悪の国ではないが、何よりも国益第一の国なのだ」。

 


 日本に長く住む元海兵隊員のアメリカ人が書いた本。アメリカにはいろいろな人種や人々がいるので「アメリカ人」というのはけして一様な人々ではないが、アメリカの社会を育んでいる共通性というものがあるため、「一般的なアメリカ人像」はあるという。

 日本人はアメリカの文化に親しみ知識としてはアメリカの社会や歴史を実によく知っているが、アメリカ人の自己中心的でアメリカ中心の気質や価値観についての理解は必ずしも十分ではないという。

 本書は、太平洋戦争を中心にした史実に対する一般的なアメリカ人の考え方や見方を紹介し、現代のアメリカを蝕んでいる問題にも触れながら、日本人のアメリカへの過度な期待や認識のズレや甘さについて指摘し、アメリカの将来に憂慮を示すと同時に、日本人にアメリカとどのように付き合うべきかについて著者の簡単な意見を加えたものである。

 アメリカは世界で一番素晴らしい国であり、アメリカは神様に選ばれ守られた特別な国であり、世界中の人がアメリカ人になりたいと思っている。一般の日本人には想像しにくいが、そういう意識が多くのアメリカ人の根底にあるという。アメリカ人の時におせっかいなくらいの親切さも、頼もしさも、傲慢さも、そこからくる。

 だから、自分たちが正しい、自分たちのやり方や考え方がベスト、なぜ日本人はそうしないのか、となる。

 アメリカ人は、自分の考えが一番だと思っているから、妥協を嫌うし、他者への理解は不十分で、しばしば押しつけを伴い、謙虚に学ぼうとしない。

 そんな一般のアメリカ人が日本に持っている関心といえば、サムライと女性くらい。戦前はもっとひどかった。

 太平洋戦争についても、アメリカは戦争を仕掛けてきた悪の日本をやっつけて正しい民主主義国家に教育した、という上から目線の見方が定着している。

 第二次世界大戦だけでなく、それ以外の戦争においても、アメリカは特別な国であり、戦争の結果その国がアメリカの文化や制度をとり入れた国になれればその国の国民だって結局幸せになれる、そうすることで世界の平和は保たれる、こういう考え方が多くのアメリカ人に当然視されてきたことで、しばしば攻撃性を伴うアメリカの国家としての活動が正当化され支えられてきた。

 しかし、世界の全ての国の人々が日本人のように勤勉で従順というわけではないから、この考えはイラクなどではうまくいっていない。

 その一方で、現代のアメリカでは、貧富の格差が深刻になり、「私は素晴らしい」と主張するだけで努力しない人が増え、お金もうけにつながらない学問は軽視されるようになった。

 広がる格差や社会問題はキリスト教原理主義に走る人々を増加させ、今や25%くらいを占めるにいたって政治にも影をおとしている。自力でちゃんと学ぼうとしないから、韓国や中国が行っている日本を貶めるプロパガンダも鵜呑みにする人が出てくる。

 環境問題としては、特に水不足が深刻になりつつある。温暖化の進展によって内陸部の砂漠化が進み、何万年もかけて溜った地下水が農業用水への大規模な利用を続けてきたことによって各地で枯渇しつつあり、コロラド川の水源となっている山脈部の降雪も減っている。

 要するに、様々な要因で今後のアメリカは国力の大きな伸長は望めそうもない。しかも、国際的には中国の台頭が著しい。だから、これからのアメリカは頼れるパートナーが必要になる。

 ところが、日本はアメリカを必要としているが、実はアメリカも日本を必要としているということを多くの人がわかっていない。現実的には、日本にある3つのアメリカ軍基地(嘉手納、横須賀、横田)がなければアメリカは世界の半分に軍を派遣するのが困難になるし、そもそも冷静に考えれば東洋においてアメリカの真のパートナーといえる国は日本しかない。だから、日本を敵視することは本当はアメリカの利益にならない。 

 しかし、ニューヨーク・タイムズが日本を蔑視した記事を載せたりするように、自己中心的な気質に加えアメリカ人の中にある日本への偏見によって、適切な理解がなかなか進まない。

 著者は、このようなアメリカ人とつき合うのは本当に大変なことで、「日本はこういう国だ」と説明することすら難しいという。しかし、「それでも、アメリカ人に対してはっきり意見を言ったほうがいい。難しいけど頑張るしかない」と述べている。

 読むのは難しくない本だ。まとまりはそれほどいいとはいえない本なのだが、読みながらとても考えさせられるものがあった。

 

新書、224ページ、ワック、2017/2/27

「太平洋戦争」アメリカに嵌められた日本 (WAC BUNKO 251)

「太平洋戦争」アメリカに嵌められた日本 (WAC BUNKO 251)