密林の図書室

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決定版 太平洋戦争⑧「一億総特攻」~「本土決戦」への道 (歴史群像シリーズ)

著:片岡 徹也、瀬戸 利春、山崎 雅弘


 「決定版太平洋戦争」の第8巻。このシリーズは掲載資料が豊富で、数ある太平洋戦争関連の著作の中でも特筆すべき内容を誇る。本書では、レイテでの完敗を受けて、
・本土決戦の準備
・硫黄島の戦い
・沖縄戦
・特攻
の4つの解説及びその背景の説明が柱になっている。

 

「日本軍は小銃をそろえることさえできず、関東地方では新たな陣地構築さえできていなかった。航空戦力も陸海軍ともに多くが練習機で、搭乗員の練度も多くは低いままであった。二会戦分を用意するはずの物資弾薬も集まらず、多くの部隊は0.5会戦分程度しか保有できていなかったのである」。


 本土決戦における記述の中でもっとも印象的だったのは、対上陸作戦の方針が二転三転したこと。すなわち、サイパン等で通じなかった水際撃滅主義→硫黄島戦などで威力を発揮した後退配備・沿岸撃滅主義→にもかかわらず、またしても水際撃滅主義の復活へ、ということになったことである。水際突進戦術への転換を具申した第53軍赤柴司令官の日誌も紹介されている。

 他にも興味深いものはいろいろあった。体制自体は各国と比べて勝るとも劣らないものであったのに、研究開発力や製造技術の未熟さから兵器や機材があまりに貧弱だったために十分な防衛が出来なかった日本の本土防空システムの実態。B-29の夜間広域爆撃の方法の解説。日本軍が多用した反斜面陣地を用いた戦い方や米軍の馬乗り作戦の解説も、コンパクトながら良くまとまっている。また、米軍の本土進攻作戦計画についても詳しく解説されている。

 アメリカが本土決戦用に準備していた各種新兵器の紹介もある。ジェット戦闘機P-80、最高速度751km/hで爆弾2トン搭載可能で航続距離も3000kmを超えるP-47N、「スーパー・キャリア」と呼ばれたミッドウェイ型空母、巨大自走砲。無反動砲。一方他のページには、特攻兵器を主体とした日本の本土決戦用の武器の説明や一覧が載っている。どうしても両方を見比べてしまう。

 根こそぎ動員の実態、ニミッツとマッカーサーの意見の対立及びルーズベルトの死がもたらした和平への道の影響についての考察もある。中国戦線でも攻勢が難しくなったことについても言及されている。

 ただし、後半の「人物群像」は、一面的で情緒的評価に傾き過ぎた内容であるように思われる。

 

ムック、141ページ、学習研究社、2010/8/11

 

決定版 太平洋戦争?「一億総特攻」?「本土決戦」への道 (歴史群像シリーズ)

決定版 太平洋戦争?「一億総特攻」?「本土決戦」への道 (歴史群像シリーズ)