編集:「消えゆく太平洋戦争の戦跡」編集委員会
ハワイ 、ガダルカナル、ニューギニア、ラバウル、サイパン、グアム 、アッツ・キスカ、 インドネシア 、インパール、 タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポール、硫黄島 沖縄。太平洋戦争に関する地域の元軍事施設跡や、放置され朽ち果てた兵器の残骸、記念館や慰霊塔といった、各地の戦跡を写真と文章で紹介した本。
中には整備されて展示されているものもあるが、ボロボロの状態になっているものが多い。沖縄編ではダイバーが撮影した海底に眠る船の写真もある。機銃掃射の跡が壁に残る東大和の日立航空機変電所跡といった本土の施設も登場する。
泰緬鉄道の元難所では、元イギリス人捕虜たちに敵意を向けられる経験をした人のエピソードも載っている。巻末には関係者2人の対談も収められている。
現在の写真が多く、かつて多くの命が散った場所が今どうなっているのかをたどりながら、太平洋戦争を振り返ることができると同時に、あれからずいぶん時間が経ったことも実感させられる内容となっている。
ただ、一部空襲の被害はあったものの韓国が写真構成として一応1ページ取り上げられているのに比べ、台湾の扱いが疑問である。「写真構成中国」の2枚の写真のうち1枚に砲台の写真があるだけで文章による説明はない。米軍との戦場になる可能性があった上に、台南海軍航空隊の拠点であり、海戦当初に台南海軍航空隊によるフィリピン攻撃が行われ、昭和19年には台湾沖航空戦があり、空の戦いになった太平洋戦争の日本の重要拠点であったことを考えると、もう少し取り上げてもよかったのではないか。
単行本、304ページ、山川出版社、2017/7/7