(著:今村雅人)
「省エネ」の定義は、「エネルギーを無駄なく、効率的に消費すること」だという。エネルギーの定義は様々だが、本書では、電気エネルギーと熱エネルギーに注目している。省エネビジネスは地味だが成長産業である。日本はエネルギー効率では世界トップクラスであるが、石油や天然ガスといったエネルギー源の多くを海外からの輸入に頼っているので、省エネにつながる技術へのニーズは高い。また、「資源エネルギー白書」の資料によると、世界のエネルギー消費は伸び続けている。
政府も2016年4月に「エネルギー革新戦略」を策定している。柱になっているのは、以下のテーマである。
・徹底した省エネルギー
・再生可能エネルギーの拡大
・新たなエネルギーシステムの構築
・エネルギー産業の海外展開
1979年に施行され都度改定されてきた「省エネ法」によって、「工事等」「輸送」「住宅・建築」「機械・器具等」への事業分野への規制が行われている。「建築物省エネ法」もある。規制だけでなく、エコカー減税のような様々な補助金制度も用意されている。
また、2011年には国際標準化機構(ISO)が、「ISO 50001」を発行した。これは、エネルギーマネージメントを定めた規格である。
省エネビジネスといっても、構成要素は様々である。本書では、以下のような図を示して、全体の構造を説明している。
インバーターエアコンは30%程度の省エネ効果を実現できる。低燃費車・電気自動車・燃料電池自動車。LED照明は少ないエネルギー消費で照明の役割を果たせる。省エネ対応は商品の競争力強化や差別化につながる。
断熱施行をはじめとした住宅の省エネ化も進んでおり、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)のように、「高断熱+高性能設備+(太陽光などで)エネルギーを創る」の3つをセットにしたものも登場している。積水ハウスは「グリーンファーストゼロ」、パナホームは「ゼロエコ」を発売している。
船舶の省エネ。航空の省エネ。配送の省エネ。製造業、鉄鋼、化学。IoTを活用したエネルギー消費の「見える化」「制御」「自動化」。熱源から電力と熱の両方を取り出して供給する「コージェネ」。様々な業種の取り組み。東京電力から分離した「東京電力エナジーパートナー」では、統合的な支援サービスを行っている(エネルギー全体の最適化|東京電力エナジーパートナー株式会社)を行っている。
省エネというのはポイント技術の活用だけでなく、大きなエコシステムレベルでの対応も重要になってくることがわかる。図解が多く、わかりやすく書かれている。
単行本、208ページ、秀和システム、2018/6/23