著:橋本 直哉、須江 信洋、前佛 雅人、境川 章一郎、佐藤 聖規、山田 修司、青山 尚暉、市川 豊、平岡 大祐、福田 潔、矢野 哲朗
2013年にDockerによるコンテナ技術が登場。このコンテナ技術を用いたアプリケーション開発が普及するにつれ、今度はコンテナの数が増えたことでサービスとしてその管理をどのように効果的に行ってゆくかということが課題となってきた。
このような背景によって、Kubernetesを使ったコンテナのオーケストレーションという概念が、近年注目を浴びている。
本書は、コンテナ技術とコンテナを統合的に扱い管理運用するオーケストレーション技術の両方を扱った技術的な解説書である。
多くの技術者の共著となっており、多岐にわたった関連技術の説明がある。まず、コンテナ技術とオーケストレーション全般についての今までの経緯とOpen Container Initiative(OCI)の説明があり、CaaS(Container As a Service)の概念について書かれている。個別の要素技術としては、以下のようなものが登場する。
・Docker:オープンソースのコンテナ技術。
・Docker Compose:複数のDockerコンテナをサービスとして定義実行する。
・Docker Swarm:Dockerプロジェクトが最初に開発したオーケストレーションツール。ただし、構成が複雑。
・Swarmkit:dockerd単体でスケジューリングできるツールキット。
・Swarmモード:SwarmkitをコンポーネントとしてDockerに取り込んだもの。現在のバージョンでは呼称として「Docker Swarm」と呼ぶ。オーケストレーション、スケジューリング、クラスタ管理、セキュリティ機能を提供する。
・Kubernetes(k8s):オープンソースのコンテナオーケストレーションプラットフォーム。
・Rancher:コンテナオーケストレーションに加え、ユーザ管理、アクセスコントロール、ストレージ管理、ネットワークのセグメンテーション、セキュリティ機能も持つ。Kubernetesをはじめとしたさまざまなオーケストレーターを選択できる。
・GKE(Google Kubernetes Engine):GoogleのGCPにおけるオーケストレーションプラットフォーム
・OpenShift: kubernetesをベースとしたRedhat社のオーケストレーションツール。Redhatの有償サポートが受けられる。
IBMのクラウドにおけるコンテナサービスについても章が割かれている。OpenShiftは2つの章を使って書かれてあって、手厚めである。概念図やコマンド例は適時掲載されている。
ただ、多くの著者が分担して書いていることもあり、内容の詳しさや分量は章によってばらつきがある。また、あまりに範囲が広すぎて、本書に書かれているすべてを理解する必要がある人はまずいないかな、と思われるくらいである。
コンテナ技術の進展によって大規模にコンテナが利用される環境ではオーケストレーション技術の採用は適切なコンテナ利用サービスの運用管理を行う上でますます重要になると考えられる。
本書はコンテナとオーケストレーションを統合的に扱った総合的な解説書であり、この分野での基本的な知識の習得を目指すインフラ系のエンジニアにとっては役立つと思われる内容になっている。
単行本、392ページ、翔泳社、2018/3/15
コンテナ・ベース・オーケストレーション Docker/Kubernetesで作るクラウド時代のシステム基盤
- 作者: 橋本直哉,須江信洋,前佛雅人,境川章一郎,佐藤聖規,山田修司,青山尚暉,市川豊,平岡大祐,福田潔,矢野哲朗
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2018/03/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)