密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

日本人は元々麻とともに生きてきた。現代の常識を疑い、大麻容認論を正面から説く。「大麻入門」

著:長吉 秀夫

 

 一瞬「え?」と思った。世の中、いろんな新書が氾濫しているが、こういうものもあるなんて。もっとも、本を読むだけなら合法だし、中毒症状も起こさないだろうと思ってモノは試しと思って読んでみた。ポジティブな視点から大麻について解説した本である。

 大麻の歴史は古い。現代ではどうしてもクスリのイメージがあるが、それだけでなく、繊維質がロープや衣服など様々な用途で使われてきた歴史がある。横綱の綱も大麻でできているのだという。

 しかも、大麻は栽培が簡単で成長が早い。栄養が詰まった葉を次々大地に返すため表土のダメージが少なく輪作にも適している。さらに、温暖な地でも比較的寒冷な地でも栽培できて生命力が強い。タネは食料にもなり、今でも七味の一部に使われている。だから大麻は古くから大変重宝されてきた。

 もちろん、負の側面としては、よく知られているように麻薬として利用されてきた。19世紀にはアヘン戦争やアロー戦争を引き起こすことにもなった。大麻が取り締まりや規制の対象になった歴史についても振り返っている。

 

 著者は、実際は他のドラッグほど深刻な症状はもたらさないという点と、麻薬以外にも重要な役割を担う植物だったという歴史的経緯から、大麻についてはもう少し有効に利用できるようにしてはどうかと訴えている。特に、セルロースが豊富で栽培も簡単であることから、バイオ分野での材料として活用できる要素があるという。世界各国の大麻事情や3種類あるという大麻の特徴についても解説している。

 さっと読める新書だが、学校ではこのようにプラスのイメージで詳しく教えてくれることがなかったものなので、なかなか勉強になる。

 

新書、214ページ、幻冬舎、2009/01