著:谷口 克広
「信長が長期にわたる包囲戦の効果を理解できなかったはずはない。だが、嫌う傾向にあったとはいえる」。
信長の戦い方、特に桶狭間の戦いに関しては近年新説も出ていて、それに対する反論や諸説も出ているようだ。少し前の本なので、新説については本書では触れられていないものの、信長の戦いをざっとおさらいする上では役に立つ本である。
信長自身が戦場で2ヶ月以上過ごしたことがあるのは、志賀の陣と長島攻めの2回だけ、というのは言われてみればなるほど、と思った。部下たちに任せた戦いでは時間をかけた城攻めもかなりやったが、好機を捉えたときの圧倒的なスピードと兵力集中が信長の真骨頂であったことが改めて理解できた。また、ページ数は少ないながらも、秀吉、家康の戦い方との比較も興味深かった。
虐殺行為もあったし、最後は部下の裏切りに遭って本能寺に消えたが、結果的に信長は戦国時代を終焉に向かわせる大きなきっかけを作り、その後の日本の方向性を変えることになった。歴史に興味のある者の心を捕らえる独特の存在だ。
新書、301ページ、中央公論新社、2002/1/1