密林の図書室

日々読んでいる本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介のブックレビューのブログです。人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものと考え、このブログを立ち上げました。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

太平洋戦争 日本の敗因〈3〉電子兵器「カミカゼ」を制す (角川文庫)

編集:NHK取材班

 

 この本の元になっているNHKの番組は当時見た。しかし、この本の内容は元々の番組とは少し違う印象を受けた。番組では、レーダー、ヘルキャット、VT信管の3つに特に焦点が当たっていた。しかし、本書はレーダとレーダを使った迎撃システムの完成及びレーダを用いた効果的なF6F戦闘機隊の運用に対して特に焦点が当たっており、それぞれのつながりによって米軍が効果的な防御システムを完成させ、総合的に日本を圧倒することになったことを、よりはっきりと示している。

 一方、この当時の日本軍機のパイロットの未熟さ、アウトレンジ戦法が与えた影響、ゼロ戦にも250Kg爆弾を搭載させたこと、エンジン技術の未熟によりゼロ戦以上の戦闘機の開発がなかなかうまくいかなかったことなども記述されているし、すべての背景にある日本軍の組織的で体質的な問題についても、米軍との比較で浮き立たせている。

 マリアナ沖海戦の惨敗については戦史を研究している者の間でも原因については多少意見が分かれるところもあるが、日米の差が決定的になった象徴的な戦いであったことは確かである。

 本書に触れられている以外でも、対空砲自体の性能の違い、2隻の練習専用空母を使った合理的なパイロット大量育成システム、無線システム、暗号システム、加工機械の技術精度の違い、それほどの熟練を必要としない飛行機の操縦のしやすさの工夫等日米間では他にもいろいろな差があったことも頭に入れておくと良い。

 生き残りのパイロットで、その後に特攻隊員たちの教官となった方の「(今まで戦争の話は)したくないと断ってきたのです。話したくないというより、(散っていった戦友や教え子のことを)思い出すと悲しくなって涙が出てしかたがなかったのです」の言葉が重い。また、米国のレーダー技術を追いかけなければならない方の日本側研究所の技術者が戦争にどんどん召集されて減っていったというのは皮肉である。

 

文庫、222ページ、角川書店、1995/7/1

 

太平洋戦争 日本の敗因〈3〉電子兵器「カミカゼ」を制す (角川文庫)

太平洋戦争 日本の敗因〈3〉電子兵器「カミカゼ」を制す (角川文庫)

  • 作者: NHK取材班
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1995/07/01
  • メディア: 文庫
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