密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

世界のリサイクルのあり方を経済と環境維持の両方から見る。「リサイクルと世界経済 - 貿易と環境保護は両立できるか」

著:小島 道一

 

 例えば自動車をとると、輸出台数のうちの21.8%が中古車であり、日本で使われなくなった自動車の約3分の1が中古車として海外で使われているという。廃プラスチック、鉄くず、古紙、電化製品、石炭灰、古タイヤ、使われなくなった船と、国境を越えて行き来する中古品、処分品、リサイクル品はたくさんある。安い中古品は新興国の国民にとっては魅力的だ。廃鉛バッテリーなどリサイクルの過程で環境汚染が生じているものもある。

 

 有害廃棄物の越境移動を規制するためにバーゼル条約が作られており、世界185か国とEUが批准しているが、アメリカは批准していない。バーゼル条約も課題を抱えており、バーゼル条約Ban改正が行われたが、10年近くかけた改正案が採択されて20年経ってもまだ発効していない。船のリサイクルについては国際海事機関(IMO)で議論が進んできたが、シップリサイクル条約はまだ発効にいたっていない。

 

 

 本書の著者は、1999年頃から国際リサイクルの研究を始め、海外調査を行い、バーゼル条約の締結会議に参加してきたキャリアを持つ。様々な統計や調査結果を紹介しながら、リサイクルと世界経済及び環境保護の関係について解説している。

 

 環境を汚染するだけのごみを輸出するのは問題だが、再生資源や中古品の輸出については、NGOか業者か、立場によって同じことでも良い悪いの判断が異なり、単純に白黒をつけられない。国によっても方針や解釈が違う。なかなか一筋縄ではいかない問題だということは分かった。

 

新書、224ページ、中央公論新社、2018/5/18