編:佐伯茂樹
「音楽の友」の楽器についての連載記事を一冊にしたムック本である。以下のようなことが書かれてある。
- ティンパニーには、低音を左に置く「アメリカン・セットアップ」と低音を右に置く「ジャーマン・セットアップ」がある。演奏に違いはないが、左手に低音が来る楽器に持ちかえる場合はアメリカン・セットアップの方が感覚的によい。
- コントラバスは4弦だけでなく、Eより低い音が欲しいときに5弦のものが用いられる場合もある。
- ホルンのベルは出口のところが急に大きくなっているので、手を入れることで高い音域の安定性をコントロールする。同時に音色の変化も作り出すことができる。
- テューバは明るい音域を得意としたフランスと重厚で低い音を目指すドイツで異なる発展をしてきた。
- オーケストラのクラシック奏者はB管とA管を持ち替えて使う。モーツアルトやブラームスはB管に比べてどこか憂いを感じるA管を使う曲を書いている。マーラーなどは、C管やEs管を使う曲も書いている。
- 「新世界より」や「トゥオラの白鳥」などで使われるイングリッシュ・ホルンは、オーボエの仲間であり木管。かつては曲がっていた。
- バイオリンは400年間基本構造が変わらず、コンサートホールの時代になると弓やネックの改良で大音量化に対応した。
- トロンボーンのスライド管によって音程を得る仕組みは500年前にはあった。オーケストラに組み込まれたのは19世紀になってから。
- 1897年にF管にB管を組み込んで両者を切り替える「ダブルホルン」が開発されたが、ウィーンフィルはそれまでのウィンナホルンを使い続けている。
- サクソフォンはキーメカニズムによって簡単な指使いで吹けるようになって、楽譜をすべてト音記号の移調譜にすることで生き残った。
- バイオリンの弓のバロックボウは短く木部が弓なりになっている。モダンボウはそれより長く木部がM型になっている。
- ファゴットはC管といわれるが実際はF管。
- オーケストラのトローンボーンは、1番と2番がテノールトロンボーンを使い、3番はバストロンボーンを使う。両者は長さは同じで管の太さが違う。
- グランドハープは47弦で、グリサンドの得意なダブルアクションハープが使われており、7つのペダルを2段階操作して、シャープ、ナチュラル、フラットと変えている。
- アルト記号を使うヴィオラは、クラリネットやホルンのような中音域の楽器に注目が集まるようになったロマン派時代に開花した。
- オーボエはオクターブを機械の補助でうまく出そうと追及した結果、複雑なメカニズムを搭載するようになった。
オタク的な話と基本的な話が混在している。それぞれ写真がついている。冒頭には有田正広氏のインタビューがあり、古楽器に目覚めたときの頃の話や、ベームフルートが得たものと失ったものといった話をしている。
楽譜、144ページ、音楽之友社、2018/2/27