著:サンデー毎日取材班
雑誌の連載を本にしたもの。貧困に苦しむ高齢者たちの実態をレポートし、そのようにならないようにするにはどうすればよいのか、というアドバイスがつづられている。
高齢者になると、収入面で2つの考慮しておかなければならない段階があるという。まず、再雇用となる60歳。それまでの年収が800~1000万円あった人でも、ここから年収300万円程度になる。次いで65歳。年金暮らしとなるが夫婦2人で月20万円程度なので、そこからはさらに苦しくなる。よって、このような将来を見越し、貯蓄を行うのはもちろん、退職金は全額老後資金にまわせるようにする。問題になりがちなのは住宅ローンで、これは退職金に手をつけることなくそれまでに完済するようにする。ゆとりローンなどは後が苦しくなるだけなのでやめる。それから、マンションの場合、ローンの返済を終えても、管理費や積立修繕金が毎月かかってくるので注意する。
とにかく健康維持に気を配る。経済的にも、それが一番安く済む方法だからだ。高額医療が必要になった場合は、国の限度額適用申請などで負担を減らす。そのような制度は自分から申請しておく必要があることを留意し、とにかく使える制度は使うようにする。そして、何よりも孤独を避ける必要がある。また、孤独が犯罪の引き金になることがあり、特にストーカーや万引きは常習化するケースがある。
あまり時間をかけずに読める本だ。難しくもないし、特別な前提知識もいらない。ただし、例として挙げられている事例は、なかなかつらいものがある。しかも、よほど余裕がある人でもなければ、これらの例を他人事だとは言いきれないだろう。
現代の老後は長い。当面大丈夫でも、高齢になればなるほど健康もお金も厳しくなる。増え続ける高齢者と悪化する国の財政事情を背景に、社会保障制度もますます厳しくなる。背景にあるのは構造的・社会的な問題だ。しかし、現実問題として頼れるものがあまりない以上、可能な限り元気なうちから準備を重ねるしかないな、と改めて思った。
単行本、192ページ、毎日新聞出版、2016/3/11
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