密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

ブロックチェーン技術の未解決問題

著:松尾真一郎、楠正憲、崎村夏彦、佐古和恵、佐藤雅史、林達也、古川諒、宮澤慎一

 

 ビットコインやイーサリウムを中心に、ブロックチェーン技術が抱える問題について、複数の識者が解説及び意見を書いたもの。

 執筆者が複数に分かれており、細切れで、書きぶりもバラバラで、同じような話が重複していたりして統一も取れていない。率直に述べて、複数の識者に丸投げした原稿を寄せ集めただけのように思える。また、必ずしも最新とは言いがたい情報が書かれている部分もある。

 ただ、セキュリティや暗号化やブロックチェーンの世界で有名な人たちが書いているだけあって、内容自体には興味深いものがいくつもある。

 

 透明性とプライバシーのトレードオフ。約10分間に1ブロック。ビットコインはビザンチン将軍問題に有効だといえるのはどこまでなのか。ブロックサイズの問題。SegWit(Segregated Witness)。Selfish mining(ちょうどMonacoinが5月15日までにロシアの取引所でこの攻撃を受けブロックチェインの書き換えが発生している)。Fast Payment(決済時に10分も待てないので店舗が署名検証とUTXOの確認をした時点で暫定的に支払い完了とする)の脆弱性。ブロックを拡散させる際に送るInventoryメッセージを悪用したDDoS攻撃。署名鍵の失効機能が無いこと。鍵管理の問題(HSMなどを使う)。The DAO(Distributed Autonomous Organization)事件であきらかになったスマートコントラクトにおいて脆弱性が発生する可能性。セキュリティの3大要素(秘匿性・完全性・可用性)でみた場合の可用性の確保。セキュリティのレイヤ別にみた場合の問題。ビットコインのコミュニティ自体の未熟性。標準化の動向と課題。このようなことが書かれてある。

 

 ブロックチェーンの初学者向けの本とはいいがたく、ある程度の基礎知識がある人向けであるが、そのような本だと最初から理解して手に取る分には悪くない本である。

 

単行本、216ページ、日経BP社、2018/1/18

 

ブロックチェーン技術の未解決問題

ブロックチェーン技術の未解決問題

  • 作者: 松尾真一郎 他
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2018/01/18
  • メディア: 単行本