著:藤崎 童士
熊本県の動物愛護センターでの「かつての」犬猫処分や保護の様子を書いたものである。残酷な場面がいくつも出てくる。
ただ、いろいろな努力が重ねられ、2016年には熊本県動物愛護センターの犬猫の殺処分は大幅に減少したという。よってこの本の内容は、既に「過去」のものである。また、動物愛護法も改正されている。
加えて、この本に書かれていることは、「本書は、限られた数人から得られた証言を元に再現した『過去』に過ぎない。よって中立公平とは言い難い。文中に事実誤認の個所があれば、著者にすべて責任がある」という但し書きのついているように、著者がいろいろな話から組みなおした話であり、著者自身の体験とか、客観的な調査レポートという体裁のものではない。
また、「罪深いのは殺処分を行う技術委員ではない。彼らにそれをさせている私たちである」とあるが、実際は、読み手の立場からすると普通に非難がそちらに向かうであろう記述も少なくない。
なにより、こういう痛ましい殺処分や扱いが行われてきたことは事実としても、それは過去のものであり、今も殺処分はあるものの規模もやり方も保護環境も大きく変わってきていることを考えると、この内容だけでは物足りない。どういう読者を想定して、あるいは読者の立場からすると何のためにこれを読む必然性があるのか、というところもはっきりしない。
「今」に対しても、もっと焦点をあてるとか、今までの統計を集めて数値的な変化を見せるとか、今後に対する提言を盛り込むとか、もう少しやりようがあったのではないか。
単行本、224ページ、大月書店、2018/3/17
犬房女子 犬猫殺処分施設で働くということ [ 藤崎 童士 ]
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