密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

マーク・ピーターセンの名著。『日本人の英語』

著:マーク・ピーターセン

 

 日本人が英語を使う時の共通する弱点をまとめたものは、近年いろいろ出ている。 本書は初版が古く、その中では古株である。ただし、英語学習の本という以前に、エッセイ風として楽しめるように書かれてある。よって、日頃英語を学習している人だけでなく、昔学校で英語を習っただけという人でも、かなり面白く読めると思われる。

 著者は日本に滞在して長く、日本語にも堪能。誰かに翻訳させたのではなく、自身で日本語の文章も書いているようだ。あちこちにユーモアがちりばめてあるし、例が具体的でわかりやすい。

 前半は、冠詞の使い方など、英語レベルに関係なく文句なしに楽しめる話が中心。中盤では、完了形の説明が秀逸。後半は、論文校正をやっていた経験から、接続詞の微妙な使い分けなど、さらにもう少し高度な話になっている。ここのレビューでは冠詞の方に話題が集中しているようだが、特に英語で書く機会もある人は、後半の話もかなり参考になる。また、欧米圏の人が書いた本らしく、各章の最初に有名人の名言を入れている。

 

 かつてかなり話題になった本だが、日本人の英語は、この本が出た時と比べて、格段に進歩しているということはない。それほど英語に通じていない人でも面白く読めて、問題意識を持つことができる本である。

 

新書、196ページ、岩波書店、1988/4/20

 

日本人の英語 (岩波新書)

日本人の英語 (岩波新書)

  • 作者: マーク・ピーターセン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1988/04/20
  • メディア: 新書
  • 購入: 135人 クリック: 2,138回