密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

爆買いされる日本の領土

著:宮本 雅史

 

 中国人が日本の水源地である森林を買い、対馬で韓国人が土地を買いあさっていることはネットで何度か読んで危機感を抱いてはいた。しかし、まさかここまで深刻な事態になっているとは知らなかった。中国では、既に「北海道は中国の32番目の省」になると言われているという。

 北海道。新潟。対馬。沖縄がかなり前から中国に狙われていることは既に知られていることなので本書ではあまり取り上げられていないが、これはもう、かつて中国の李鵬首相が「40年後には日本はなくなっているかもしれぬ」と言ったのを冗談とは言えない状況になっている。

 しかも、外国人の土地買収は日本では合法であり、報道されることもないので、高齢化と過疎化と経済的な疲弊が続く地方の土地が次々中国の手に落ちている現実が広く報道され語られる機会は多くない。

 著者は「武器のない戦争」を仕掛けられていると強調しているが、日本側にはその認識がほとんど無く、何も対策が打たれないまま、事態は静かにかつ急速に進行している。

 一帯一路構想。北極海航路中国共産党の影。観光ビザで来日して土地を買いあさる人々。まとまって土地を買うと永住権がとりやすいという日本のルール。国交省が外国人の土地取得をやりやすくするために作成しようとしたマニュアル。中国人同士の不動産情報を共有するネットワーク。自衛隊の重要拠点の近くの土地の買収。

 日本は少子高齢化が進み、人口減少社会に入った。地方は特に深刻だ。そこを狙って、中国が空き家や目先のおカネが欲しい地権者から次々この国を買い続けている。このままでは、この動きは日本の少子高齢化の変化に合わせてさらに加速するだろう。

 納得できないのは、中央省庁の官僚や政治家たちの無策ぶりである。土地は物品のように持ち去ることはできないし、知的財産のようにコピーするというわけにもいかない。日本国の治世下にある限り法的な縛りを作ることでやりようはある筈なのだ。彼らが動かない背景には一体何があるのか。いずれにせよ、多くの人がこの現実に気づき、目を向け、正しく理解しなければならない。

 このままだと、この国は本当に無くなってしまうか、名前は残っても実態は中国に支配される国になるだろう。非常に強い危機感を抱いた。

 

新書、256ページ、KADOKAWA、2017/7/10

 

爆買いされる日本の領土 (角川新書)

爆買いされる日本の領土 (角川新書)