密林の図書室

日々読んでいる本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介及び読書感想をまとめたブックレビューのブログです。人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものと考え、このブログを立ち上げました。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

ロボット--それは人類の敵か、味方か――日本復活のカギを握る、ロボティクスのすべて

著:中嶋 秀朗

 

 ちょっと大げさ気味なタイトルがついているが、ロボット工学がたどった今までの経緯、現在、今後の展望についての著者の見解を、一般向けに書いた本。技術の話については最小限にしてあり、それほど前提知識のない普通の人でも読めるような内容になっている。

 

 初の国産産業ロボットは1967年に川崎重工が制作。腕型の工作ロボットが、それまでの単調重労働だった自動車工場の現場を変えてゆく。

 2度のオイルショックが製造業を追い詰め、産業用ロボットの導入が右肩上がりで増えてゆく。さらにアーク溶接ロボットの登場で、点から点しか扱えなかったロボットが、溶接ラインに沿って作業をするということができるようになって用途が広がる。

 小さなサイズでロボットを動かすことができる電動モーターとロボットの関節に搭載できる小さな減速機の登場によって、油圧稼働から電動になる。さらに、現在でも主力になっている垂直多関節型ロボットが登場し、これをマイコンによって逆運動学を解きながら制御することが可能になった。

 

 1980年代には水平多関節型(スカラ型)ロボットが登場して、電子部品産業を支えてゆく。現在でも産業用ロボットの7割を占める垂直多関節型ロボットは6関節になり、減速機が進歩する。マイコン、モーター、減速機といった各部品の進歩がロボット産業の進歩をもたらす。

 

 2000年以降は二足歩行のロボットが流行る。産学連携としてロボットスーツ型のものが開発され一部で成功を収める。しかし、ヒューマノイド型のロボットについては人々の期待に追いついたかというとそういうわけにはいかなかった。福島第一原発の事故では、国産のロボットは役に立たず、使われたのは軍事用に技術を蓄積したアメリカ製のものだった。

 

 近年サービスロボットとして成功しているものは、おそうじロボットのような、目的を絞り機能を絞り、単純・タフで必ず動くものになってきている。

 

 ロボット開発は機械とソフトウェアの共同作業になるので、AIの進歩はロボット研究にも大きな可能性をもたらす。特に、Deep Learningを含めた機械学習の登場は、ロボットの課題だった対象の認知能力の改善につなげられる。

 ただ、ソフトウェアの進歩に比べ、機械の開発の方は物理的な制約が大きいので細かいすり合わせ作業が必要になったたりするため、ハードとソフトの開発は同じようにはいかない。

 

 ロボット用のソフトウェアを開発するプラットフォームは、オープン化とモジュール化が進んでいる。代表的なものは、シリコンバレー発のROS(Robot Operating System)と産総研の開発したOpenRTMであり、後者は最近前者に押され気味である。

 

 日本のロボティクス分野の優位性は、ソフトウェアよりハードウェアになる。コピーが容易なソフトウェアに比べ、ハードウェアは技術と経験値の蓄積が必要。特に、アナログとデジタルの融合という点では、追い上げる中国に比べても日本はまだ優位性がある。

 また、日本は少子高齢化で世界の先頭に立っており、福祉の現場の充実が必要であるうえに、労働者も足りなくなっているが、このようなニーズのある「課題先進国」であることが、ロボット開発にとっては需要になる。

 

 尚、著者は、ロボットは物理的な制約があるし、AIも万能ではないとしたうえで、ロボットを生かすことが人間の役目として重要であり、ロボットに仕事を奪われるなどということはない、と断言している。

 

単行本、 220ページ、ダイヤモンド社、2018/1/18

 

ロボット--それは人類の敵か、味方か――日本復活のカギを握る、ロボティクスのすべて

ロボット--それは人類の敵か、味方か――日本復活のカギを握る、ロボティクスのすべて

  • 作者: 中嶋秀朗
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2018/01/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)