著:ニール・D・ヒックス、訳:浜口 幸一
「ハリウッドはビジネスであって、芸術ではない。そこは、創造的な努力と財務の力が共同で働いて、大衆が見たいと望むもの、喜んで金を払うものを生み出してゆく、巨大な工場である」。
映画の脚本家になるためのコツを書いた本。良いシナリオを書くためのポイントだけでなく、売り込み方や契約上の注意、映画産業の中での脚本家の位置づけや監督など他の役割を担う人たちとの関係についての説明もある。数々の有名な映画を引き合いに出して解説してあるし、適時ワークブック形式になっている。
「始まり−中盤−結末」の基本パターンは、それぞれ「誘引−期待−満足」という対比で語られている。ドラマにおいては葛藤が重要。葛藤には、個人内、個人間、状況的、社会的、関係的の五種類がある。そして、主人公の敵対者は、強大なものである方がいい。また、登場人物は組み立てるものではなく、脚本家の中に生きているもの。脚本家は彼らを研究して耳を澄ましてそれを呼び覚ますようにする。そして、プロットと登場人物は不可分のもの。
劇的強調、背景、時間、登場人物の行動様式。会話には、ストーリーを前進させること、登場人物を明らかにする役割がある。危険の感覚が会話シーンに期待を与える。脚本のフォーマットにおいて最も基本的なことは、読みやすくすること。
「作られたものは、常にある点で妥協である」
「映画は我々の頭ではなく、心に向けられていることを忘れないように」
米国映画産業の舞台裏を垣間見ることもできる。その道を目指す人達の間では有名な本らしいが、映画の脚本家になる気がない人が読んでも面白かった。