密林の図書室

日々読んでいる本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介のブックレビューのブログです。人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものと考え、このブログを立ち上げました。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

夜は短し歩けよ乙女

著:森見 登美彦

 

 変わった小説ですね。Amazonのレビュー欄とか見ると、馴染めなかったとか、入っていけなかったとボロクソに書いている方が何人かいらっしゃいますが、大丈夫。そういう人は、たぶん正常です(笑)。

 舞台は京都。古風で大げさな表現を散りばめた文体で、現実とも幻想ともつかない調子の物語がユーモラスに進行する。場面は大きく4つ。先斗町での不思議な宴会騒ぎ。下鴨納涼古本祭りと不気味な闇鍋。大学祭での奇妙な寸劇と騒動。京都を席捲する風邪とフィナーレ。

 黒髪の後輩に心を惹かれ、悶々としながら深遠に外堀を埋める努力を続ける先輩。その先輩に、どこで遭っても、「奇遇ですねえ!」という女の子。個性的というより、奇妙と表現した方がふさわしい登場人物たち。不思議に満ちた雰囲気の中で、先輩と乙女の視点がテンポ良く切り替わる。

 見事な、「誇大妄想型一大純愛絵巻」である。個人的には、事前の期待があまりに大きかっただけに、正直、そこまでではなかったかな、というのもある。しかし、ストーリーはよく練られているし、ユニークで、なかなか見事な作品である。どこかユーモラスで、読後感もさわやか。それから、表紙のイラストは、このお話にまさにぴったりでとてもいい。

 

文庫、320ページ、角川グループパブリッシング、2008/12/25

 

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)