著:長沼 毅
極限状態に耐えられる生物や生命の進化の原理について紹介しながら、生命ついての見解をまとめた本。著者は、極限環境の生物学を専門とする大学の准教授。
不死身で有名なクマムシ。脱水し、水の代わりにトレハロースで体内を満たすことで、クリピトビオシスと呼ぶ仮死状態に変わって極限に適用できる。151度の高温でも、絶対零度に近い0.0075ケルビンの低温でも耐えられる。X線に対しても強い。
ネムリユスリカの乾燥幼虫も同じように乾燥重量の20%をトレハロースが占めるようにして極限に耐える。しかし、自然界には、このような休眠状態にならなくても、以下のように極限に耐えられるものがいる。主に、バクテリアとアーキア(古細菌)である。他にも、鉄を食べるバクテリア(ハロモナス・ティタニカエ)や、消化器官を持っていないチューブワームなどの紹介がある。
・高温に耐える:メタノピュルス・カンドレリ
→化学結合でたんぱく質を補強しており、122度でも増殖。
・高圧に耐える:大腸菌
→2万気圧でも生きる。
・高塩分濃度に耐える:ハロモナス
→浸透圧調整物質をコントロールでき、塩分濃度30%でも、真水でも生きる。熱や乾燥にも強い。
・高放射線濃度に耐える:ディノコッカス・ラジオデュランス
→1440グレイの放射線まで耐えられる。シーベルト換算で毎時6000万マイクロシーベルト。ゲノムが4セットあるので、4つの全てで同じ場所が傷つかないかぎり遺伝子を修復できる。
・長寿命に耐える:ハロバチルス
→2億5000万年前にできた岩塩の中から生存状態で見つかった。
・重力に耐える:バラコッカス・デニトリフィカンス
→遠心機の限界の40万Gでも大丈夫だった。
著者によると、生命とは炭素化合物であり、2つの安定状態である還元状態(メタン)と酸化状態(二酸化炭素)の中間の不安点な状態であり、また、自己増殖する散逸構造であるという。生命の進化についての一般的な解説もある。
ちなみに、生命の生存には、水、熱、有機物の3つが必要になるが、火星ですらこのうちの水しかまだ見つかっておらず、地球以外でこの3つがあるのは土星の氷衛星エンケラドゥスだけだということだ。尚、火星については、この本が出版された後で水が見つかっているので、生命の生存の可能性が出てきたということになる。
新書、240ページ、講談社、2013/12/20