著:ロバート・キャパ、訳:川添 浩史、井上 清一
「106枚写した私の写真の中で救われたのは、たった8枚きりだった。熱気でぼけた写真には、”キャパの手は震えていた”と説明してあった」。
歴史上もっとも有名な戦場写真家であるロバート・キャパが残した第二次世界大戦中の活動回想録。かなり個人的な記録で、恋人との間のことや、連合軍の兵士とのポーカー、酒の話が頻繁に出てくる。
亡命ハンガリー人の立場での従軍記者登録。イギリスへの移動。いつの間にか軍事機密を撮影していて問題になったこと。北アフリカ戦線。イタリア戦線。そして、ノルマンディー上陸作戦。パリ入城。ドイツへの進軍。
本書を読んで、キャパという人が多くの人から愛された理由がわかった気がする。とても人なつこく、兵士たちともすぐ仲良くなっていたようだ。いろいろな国の言葉を話すので時には通訳もさせられる。本書に綴られたエピソードを読む限り、キャパのコミュニケーション能力の高さが、様々な制約の多い戦場での取材において役に立ったことは疑いない。ユーモアも交えてある。交友範囲も広い。スペイン内戦以来の仲でキャパが「パパ」と呼んでいた、アメリカ軍の名誉客員として参戦していた文豪ヘミングウェイの戦場のでの血気盛んな様子にはびっくりさせられた。
翻訳もの特有の多少くどさのある文章だが、それほど読みにくくは無い。キャパが撮影した写真も含まれている。
単行本、302ページ、ダヴィッド社、1980/1/1