密林の図書室

日々読んでいる本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介及び読書感想をまとめたブックレビューのブログです。人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものと考え、このブログを立ち上げました。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

著:勝木 俊雄

 

 この国の春を美しく彩る桜は、日本人にとってかけがえのない存在である。しかし、植物としての桜については、必ずしも正しく理解されているわけではないという。誤解は多く、染井吉野の木の寿命は短いとか、種を作らないとか、剪定してはいけないとまことしやかに言われたりしている。本書は、そんな桜について植物学的な観点から正しく解説している本である。

 桜の種類は世界でおよそ100種で、日本の桜の種類は10種類だけ。野生種と栽培種の違い。染井吉野には丸々1章があてられている。韓国人の染井吉野済州島起源説の真偽については、学術的な立場から慎重に否定している。

 狂い咲き、早咲き、八重咲き、菊咲き。枝垂れ。文化遺産としての栽培品種。自生する山桜。海を渡った桜。桜の一生。十種の桜の楽しみ方。温暖化と桜前線。桜の管理。染井吉野の雑種。このようなことが取り上げられている。

 身近な存在でありながら、結構知らないことがたくさんあって驚く。遺伝子汚染の問題などは本書を読んで初めて知った。著者も、桜の研究を始めたときは誰もが知っている植物だから調査され尽くしているのではと思っていたそうだが、実はそうではなく、新たな研究の余地がいろいろあったと振り返っている。お花見の席で披露するものしりネタにも役立ちそうな本である。

 

新書、240ページ、岩波書店、2015/2/21

 

桜 (岩波新書)

桜 (岩波新書)