著:石川祐一、写真:神崎順一
長い歴史を持つ京都。日本を代表する古都だが、ここにあるのは伝統を感じさせる神社仏閣だけではない。実は素敵な洋館がいくつもある。そんな京都の洋館を豊富な写真を中心に紹介した本。オールカラー。
公共施設、文化施設、学校、教会・寺院、商業施設・企業、住宅に分けて、様々な洋風建築が登場する。京都府庁旧本館の内部は気品すら感じる。アーモスト館はアメリカの豪邸のよう。同志社女子大学栄光館の講堂は立派。弥栄会館の外観は極めてユニーク。京都ハリス聖教会生神女福音堂は可愛さを感じる建物。本願寺伝道院は天井の模様が印象的。長楽館の内装は部屋によって風情が異なりひとつひとつが個性的で目を奪われる。
幕末に開港した神戸・横浜、明治に入り居留地が設けられた東京・大阪とは異なり、京都は明治4年の京都博覧会で初めて外国人の旅行制限が解かれた地域であり、洋風建築が作られるようになったのはそれほど早くはないそうだ。
しかし、大工が手掛けた疑似洋風のもの、コロニアルスタイルのもの、本場の建築家の手によるミッションスクールや教会用の建物と、着実に洋風建築が根付いていく。
明治後期以降の武田五一や松室重光、本野精吾、藤井厚二という人たちが活躍する。大正後期以降は、熊倉工務店と京都あめりか屋の2つの工務店が洋風建築の供給に大きな役割を果たす。
それにしても、さすがは京都だ。洋館でさえどこか奥深い。303ページとたっぷりあるのに、もっと見たい、と思ったくらいだ。
単行本、304ページ、光村推古書院、2016/12/5