密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものと考えており、このブログを立ち上げました。日々読んできた本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介及び読書感想をまとめたブックレビューのブログです。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

もっと知りたいベラスケス ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

著:大高保二郎、川瀬佑介

 

 ディエゴ・ロドリゲス・デ・シルバ・イ・ベラスケス(Diego Rodríguez de Silva y Velázquez, 1599-1660)の生涯をその作品と共に紹介した本。オールカラーでムック本サイズ。

 

 ベラスケスは作品数が少ない画家である。スペインの宮廷画家としてフェリペ4世に気に入られ、周囲の嫉妬と戦いながら社会的名誉も追求し、王の私室取次係に任じられ、確実に宮廷での地位を築き、王宮配室長という高い地位まで出世している。このため、執務に追われ、絵を描ける時間は次第に限られていったようだ。晩年は大変な名誉とされるサンティアゴ騎士団にも入団している。

 

 ユダヤ教からカトリックに改宗した「コンベルソ」と呼ばれる集団に属する裕福な平民の出である。1611年に当時の画壇を代表する画家フランシスコ・パチェーコの工房に6年契約で入る。単なる職人ではなく、「高貴な芸術としての絵画」という考えを引き継ぎ、1617年に検定試験合格後に画家組合に入って職業画家として歩みはじめる。厨房画(ボデゴン)と呼ばれる室内情景や静物も描いている。

 

 肖像画で評判をとり、積極的な就職活動の末に、2度目のマドリード旅行で王室画家の地位を得る。宰相のオリバーレスは「ベラスケスだけが国王の肖像を描くべきで、他の肖像は王宮内から撤去されるべきだろう」とまで宣言したという。豊かな王室コレクションに日常的に触れられるようになったことで、ベラスケスは、神話や宗教、歴史や風景も手掛けるようになる。

 

 ビジュアル中心の構成で、「卵を料理する老婆と少年」「バッカスの勝利」「ブレダの開城」「鏡のヴィーナス」「教皇インノケンティウス」「マルガリータ王女」など、数は少ないが非常に質の高い作品が紹介されている。

 

 ベラスケスは、後年、マネによって再発見され、絶賛され、注目を浴びるようになった。著者は、冒頭部分で、そのように後世において幅広く評価を高めることになったベラスケス作品の革新性について、以下の3点を挙げている。

 

1.モデルの身分や境遇であっても個として描く、対象に向けた無差別さ

2.主観的な雰囲気のリアリズム

3.作品に描かれた空間(=虚構)と現実空間をつなぐ複雑さ

 

 ページ数は少ないものの、作品の画像中心の構成で、わかりやすい。印刷の質も高い。17世紀の宮廷画家という以上の革新性を秘めたベラスケス作品の特徴が理解できるように書かれている。

 

単行本、96ページ、東京美術、2018/1/31

 

もっと知りたいベラスケス ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

もっと知りたいベラスケス ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

  • 作者: 大高保二郎,川瀬佑介
  • 出版社/メーカー: 東京美術
  • 発売日: 2018/01/31
  • メディア: 単行本